ある男が離婚間際のわたしにこう言った。
5年前に知り合ってたら、と。
4歳の娘がいて、愛情表現の語彙はたくさん待ち合わせていて、無いところから美学を産み出せる繊細な感受性もあり、それでいて朴訥とした男だ。
5年前、私は25歳で、命を賭けるほどの大恋愛を沢山していた時期だった。
5年前だったら何なのか。
私達は常に今の話をしている。
たられば話は聞き飽きた。
男共が囁く甘い言葉に狂酔しそうになるが、
気を正せ。
私を守れる者は私しかいない。
今のように地獄の淵に陥った時に思い出す名言がある。
近所の寿司屋まで散歩していたときに個人投資家である夫が教えてくれた株の格言である。
買いは家まで、売りは命まで。
あまりの救いようのない語列に心がヒュンと縮こまった記憶がある。
本来、人は死に直面するような恐怖とも戦ってきた生き物だ。
孤独な生き物なのだ。
気を正せ。
私よ、賢く生きろ。
心眼を持って、物事の真髄を見極めろ。