長い人生において、
深く底知れぬ思考の淵に立ち、漆黒で静寂に満ちた混沌の中に溺れたい瞬間がたまにある。

胎盤の中のような、外部と遮断された静寂に支配された環境にいて、母の鼓動だけを聞いていたい。




今の私にとって、世間はあまりにも騒がしすぎる。


ただ、世捨て人になる気は毛頭ないので、惰性とお決まりの笑顔で日常をやり過ごしているうちに、
人生は知らないうちに加速度的に進展していたりする。


私の人生に登場する登場人物はみな、いまの私のこの宙ぶらりんな無気力さに困惑しているのだろうが、
主人公である私が一番困惑している。
そして疲労困憊でくたくたである。


世間が私によく言う言葉がある。
"君は完璧だね。欠点が皆無だよ。"

果たしてそうなのだろうか。
欠点のない人間を演じることは容易いが、
誰しもがどす黒く渦巻く醜さを秘めているものではないのか。

欠点がない人間など存在しない。
欠点も含めて美しいのが人間ではあるまいか。
世間よ、私に期待するのはやめておくれ。


私は本来だらしなく体たらくで自己中心的で不真面目で、自分を正当化することに関しては悪知恵の働く、性格の悪い人間だ。




そういえば、元夫と離婚する際に言われた言葉を、今でも一言一句違わず覚えている。

"君は誰よりも美しくクレバーで一緒にいて楽しくて、俺は君以上の人と出会うことはないだろうし、君の事を好きだと言う人はいくらでも現れるだろう。
ただ、君には人として欠けている大切な部分が一つある。
次、君を好きだと言う人が現れたときに、どうか彼を傷付けるようなことはしないでくれ。"


あの言葉はなんだったのだろう。

ただ、彼にとっては、嘘ひとつない魂の叫びだったであろうことは想像できる。



今日もまた、深い思考の縁を行ったり来たりしながら孤独な眠りにつこう。