書評「教誨師」堀川恵子 | 仮面ノート

書評「教誨師」堀川恵子

 教誨師として半世紀の間、死刑囚に寄り添ってきた僧侶の物語。
自らの力で罪を見つめさせ、心を開かせ、人間の心を取り戻させた死刑囚が、
その翌日には絞首台に送られてしまうのである。
そして、その生を見つめ直した人間の死の瞬間に付き添うのである。

 この非情の世界に生きた一人の人間の悩み、苦しみ、絶望を見事に描いている。
読めば自然と生と死、死刑制度を考えざるを得なくなるのである。

 すでに著者は死刑問題の第一人者といってよいが、
作品ごとに内容が充実していっているのはすごい。