先日発表された本年度第87回アカデミー賞で、作品賞・監督賞・撮影賞・脚本賞を受賞した作品。そして、それも納得する映画ファンにはたまらない作品です。


物語の主人公は、20年前にスーパーヒーロー映画「バードマン」で主役を演じ、世界的スターになった俳優リーガン。しかし、それ以来ヒット作に恵まれず、私生活でも離婚した上、一人娘サムは薬物に溺れ、莫大な資産もほとんど残っていません。


そんなリーガンが再起をかけて、レイモンド・カーヴァーの作品「愛について語るときに我々の語ること」を自ら脚色し、演出し、主演もして、ニューヨークの演劇界ブロードウェーに掛ける事にします。


物語は、そのプレビュー公演一日前から始まります。出演するのはリーガンの他、リーガンの現在の恋人ローラ。下積みを経てようやく夢だったブロードウェー初出演を掴んだレズリー。そしてリーガンが酷い役者だと思っているラルフですが、そのラルフがリハーサル中に怪我をした事で急遽代役が必要となります。

そんな時に、レズリーの恋人で、実力のある俳優マイクが出演できると言う話を持ってきます。それを聞いてプロデューサーのジェイクも大喜びしますが、来てそうそう性格に大問題を抱えるマイクは、リーガンと激突。さらに、リーガンの付き人として仕事をしている娘サムも、父親に対して反抗してばかり。さらにローラから妊娠を告げられるなど、トラブルが続出!しかし、明日はプレビュー。そして数日後には初日の幕が開きます。果たして、リーガンのブロードウェーデビューはどうなってしまうのか?



この映画で最初に目を奪われるのが、今回アカデミー賞撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキの素晴らしいカメラワークです。なんと、この2時間の映画が、まるで1シーンですべて演じたかのように、一度もカメラがカットされる場所が無く、流れるように次から次へと、それは劇場の楽屋から舞台、そして劇場の外までもずっと途切れる事なく展開していくんです。もうこの見事な映像を観ただけで、撮影賞に納得。ちなみに、エマニュエル・ルベツキは、昨年映画「ゼロ・グラビティ」でもアカデミー賞撮影賞を受賞しているので、2年連続でのアカデミー賞撮影賞受賞者となりました。


そして、実は音楽も素晴らしいんです!見事なドラム演奏は、ジャズの即興を感じさせ、その音楽に俳優のセリフが乗る場面は、まるで歌舞伎の義太夫を思わせるような糸乗りでシビレます。この見事なドラムを見せるのが、グラミー賞を4度受賞しているアントニオ・サンチェス。


また、この映画は、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と共に、前作「BIUTIFUL/ビューティフル」の脚本を手掛けたニコラス・ヒアコボーネ、アルマンド・ポー、そしてオフ・ブロードウェイなどで活躍するアレクサンダー・ディネラリスJr.の4人が共同で書いたオリジナル脚本。そこには、ハリウッド俳優が実名で出てきたり、さらに映画界を皮肉るセリフなども出てきて、気の利いたセリフと言い、脚本賞受賞も納得。

リーガンに、自分の分身と言えるバードマンの声が聞こえてきたりと、現実と妄想が入り乱れる展開は、ダーレン・アロノフスキー監督映画「ブラック・スワン」を思い出す方もいるかもしれません。この映画は、演劇版「ブラック・スワン」とも言えます。


そんな物語を見事に見せる監督の手腕は、本当にアカデミー賞監督賞、そして全体の完成度としての作品賞と言うのも納得。まぁ、これだけの映画を作ればね、と言う感じがします。


とは言え、ある意味で内幕モノと言える作品だけに、映画ファンが大好きな映画とも言えます。果たして映画ファンでは無く、これが「アカデミー賞作品賞を獲ったんだって!」と言うライトな層は、これを観てどう感じるのか?

是非、ご自分の目で、この映画を判断して欲しいです。