インタビュー:一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会理事長 南涼子さん(1) | 四季彩

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今回のインタビューは、一般社団法人 日本ユニバーサルカラー協会南涼子さんです。
2回にわたるインタビューの1回目である今回は、「ユニバーサルカラー」について伺いました。






一般社団法人 日本ユニバーサルカラー協会の業務内容:
カラースペシャリスト、カラーセラピストの養成・色彩コンサルティング全般・講演

一般社団法人 日本ユニバーサルカラー協会の沿革:

2000年福祉・医療分野を専門としたカラーコンサルタントとして独立
2001年全国での講演・大学、専門学校等の講師として活動を始める
2003年「日本ユニバーサルカラー協会」設立
2010年「クリスタルカラーセラピー」を考案、開発する
2011年「美人になれるカラーセラピー」を開発・展開する
日本ユニバーサルカラー協会を一般社団法人化






一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会
カラーニュース 中川(以下中川):南さん、今日はインタビューのお時間を頂きありがとうございます。早速ですが、南さんが色に興味を持ったきっかけから教えて頂けますか?

日本ユニバーサルカラー協会 南さん(以下敬称略):広告の仕事をしていて展示会やイベントの現場に携わる仕事をしていた時に、ブースの集客と色が関わっている気がして、「色に効果や影響があるのか」と思っていたんですね。

中川:そういうところに気付くセンスはすごいですね。

南:企業イメージと色とのマッチングがあるのかなぁ…と思ったりして、これは調べてみなきゃ、と思ったんです。
ちょうどその頃は「代わりがいる」仕事ではなく、自分にしかできない、自分に合う仕事がないかなぁ…と思っていたので、色について調べてみることにしたんです。そうして本屋さんへ行ってみた本が「色の本棚」という本でした。
そのときまで色は感性やセンスだと思っていたのですが、理論的で根拠があるものだと気付かされたんですね。「色って仕事になるんだろうか?」と思いながらスクールにいったら、「やっぱりこれだ!」と感じまして。それでお決まりのパターンですが、色彩検定3級、2級、1級と取りました。

中川:資格を取ったところでどうしたら良いのかと悩む方はとても多いと思うのですが、南さんはどのように仕事に繋げていったのでしょうか?

南:どうやって仕事に繋げていこうか模索しました。自称「カラーコーディネーター」でも実際は仕事が来なくって、そんな期間が1、2年くらい続いたんですよ。

中川:そんな状況をどうやって打開されたんでしょうか?

南:「自称」でも周りの方に「カラーコーディネーター」だって言い続けていたんです。そうしたら、知り合いを通じて老人ホームから仕事の依頼が来まして。カーテンを総取り替えしたいので色の専門家を入れたいと言われたんですね。それまで、パーソナルカラーやファッションの分野で仕事をしたいと思っていたので、福祉や介護関係のお仕事は抵抗があったんですよ。「老人ホームって暗いんじゃないかなあ」って。最初は断ろうと思っていました。
一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会
中川:なぜ受けることにしたのですか?

南:何はともあれ実際行ってみないと分からないと思ったんです。それで行ってみたら、良い意味で期待外れだったんです。笑顔があるし、職員さんもみなさん生き生きとしていらっしゃって。施設長の方も色についての理解もあり、「ここでお仕事をさせて頂こう」と感じました。それがこの仕事を始めたきっかけにもなっています。

中川:カラーリストさんは、それまでの専門や仕事での経験を強みにしてお仕事をされている方が多いような気がしますが、経験ゼロから仕事を請け負うことに抵抗はなかったんですか?

南:もともと会社勤めだったころもゼロから作り出す仕事ばかりでしたので慣れていたんですよ。ゼロからでしたので、まずはその老人ホームでボランティアを行うことから地道に始めましたね。

中川:どんなボランティアを?

南:いわゆる「お話し相手」ですよ。入居者の方もそうですが、職員の方にもヒアリングを行いました。カーテンの色の提案にしてもどういう色が求められているのか、その場所にいる方に聞かないと分からないと思いましたので。そんな過程で人とのふれあいや職員の方の働く姿勢に心が打たれるものがあったんですね。老人ホームでのボランティアをしながら「私が求められている仕事はこれだ」と、使命を感じました。

中川:始めのカーテンのお仕事から、どのようにお仕事の幅を広げて今の協会を作られたんですか?
一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会
南:まず、老人ホームでの仕事の成果を発信しようと思ったんですね。当時はまだ今ほどインターネットが普及していなかった時代でしたが、ホームページを立ち上げて、発信することをしました。
それからボランティアも精力的に行ったんですよ。カラーワークというもので、例えば「初恋」のようなテーマを決めて抽象的な形に色を塗ってもらうというセラピーや、お年寄りの方に似合う色を提案するパーソナルカラー診断をやりました。そういったボランティアのこともホームページに載せるようにしていました。

中川:ホームページに活動内容を紹介して、反響はありましたか?

南:各方面から問い合わせがあったんですよ。取材の依頼や、「ボランティアに来てほしい」という依頼などなど。
それから、カラーリストさんから「私もやってみたい」という問い合わせもありました。最初は「どうして私が作り上げたノウハウを人に教えなきゃいけないんだ」と思ったりしていたのですが、最終的には「みんなにノウハウを提供して活躍してもらっていろいろな情報交換をしながら広めていくべきだ」と思うようになったんです。特に、今副理事をやってもらっている札幌の木村真夢さんとの出会いが大きかったですね。

中川:「この人だったら一緒にできる」と思ったポイントは何だったのでしょう?

南:行動力でしょうか。あとは初めて会った時も初めて会った感じがしなかったんですね。旧友に再会した感じで。それから少しずつ、一緒に関わってくれるメンバーが増えていきました。

中川:それがユニバーサルカラー協会を設立するきっかけにもなっているのでしょうか?

南:はい。徐々に仲間も増えてきたので、お互いが成長し合うためにも組織を作る必要があると思いました。個人よりも組織の方が大きい力になりますから。そうして2003年にユニバーサルカラー協会を立ち上げました。

中川:どうして「ユニバーサルカラー」という名前にしたのですか?

南:ちょうどそのころ「ユニバーサルデザイン」という言葉が広がり始めたところで、カラーにも「ユニバーサル」が必要だと感じたんですね。福祉・医療などの分野で色を広めていきたいということもあり、名前を付けました。
一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会
中川:今はどのような活動をなさっているんでしょうか?

南:主に福祉の現場で、インテリア、ファッション、心理、食…分野を問わず様々な「色」に関わる仕事をしています。また、活動を続けているうちに、講演の依頼が来たり、福祉や医療分野以外からのカラーコーディネートの依頼も来るようになったので、時々そのような仕事も受けています。例えば「統計調査員のカラーコーディネート」のような。

中川:統計調査員にまでカラーが必要とされているなんて!最初の老人ホームから始まって、徐々にお仕事の幅を広げられていったんですね。でも、福祉分野に特化することはビジネスという視点で考えた場合、難しさはありませんでしたか?

南:ありましたよ。やっぱり「ボランティアで」という依頼は多いんです。最初はボランティアで仕事を引き受けるというのは、「仕事の価値も下がるし、そもそも仕事じゃないでしょ」って思ったりしたんですけど、当時は実績がなかったので、「まず実績を作らなきゃ」という思いで受けていました。そうやって実績を積み上げていくうちに、徐々に報酬も付いてくるようになりました。

中川:印象的だったご経験はありますか?

南:ある老人ホームに行った時に、床に丸い水色の模様があったのですが、認知症の方がそこを通る時に避けて通ったり、そーっとゆっくり歩いたりするんですね。認知症の方は、水色の丸を「水たまり」に見ているんだということに気づいたのが記憶に残っています。

中川:それはびっくり。実際現場に行かないとなかなか気付かない盲点ですね。

南:あと、おしゃべり好きの重度の認知症の方が、カラーワークを始めると、おしゃべりをせず集中して取り組み、とっても個性的な色使いをされたり。また別の方は、話の内容や歩き方が女性らしいとはとても言えないくらいだったのですが、似合う色を知りメイクをしたことで、急に話し方や仕草が上品になったということがありました。著書にも載せているのですが「ガハハハ」笑いが「オホホホ」笑いに変わったんです。

中川:色がきっかけで、そこまで変わる方もいらっしゃるんですね。

南:色のもつパワーを改めて実感するきっかけになりました。お年寄りの方から気づかされることはとても多いんですよ。
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中川:若い方とお年寄りの方とで、色に対する反応に違いはあるんでしょうか?

南:基本的にないと思います。ただ、しいて違いを言うとすれば、お年寄りの方が色からの影響を受けやすいですね。若い方は、色々な場所に行って色々な色を見ていますから、色からの刺激に慣れてしまっているのでしょうが、高齢者の方は、1個所に長くいることが多い分、色からの影響を受けやすいのかもしれませんね。

中川:そうすると、若い方とお年寄りの方とでカラー提案で注意するべき点も違ってくるんでしょうか?

南:そうですね。色からの影響もありますが、何よりも重要なのは「安全性」です。

中川:さっきの「水たまり」のようなことですか?

南:はい。認知症の方が誤解しないデザインを考えることは大切ですね。あとは不穏になるデザインは避けなければいけません。幾何学模様や興奮色を用いると、疲れやすくなったり、いらだったり、怒りっぽくなる方もいらっしゃるので注意する必要があります。

中川:幾何学模様は使ってはいけないんですね。

南:あと服装も大切なんですよ。介護する側の洋服の色が、介護される側にも影響を及ぼします。例えば暗い色はダメなんですよ。明るい色は何より「見えやすい」ので、何かあった時にも声をかけやすく、それが安心感にもつながるんですね。

中川:色が安全性や安心感に影響を与えるなんて、なかなか現場にいる方でないと気付かない盲点ですね。

南:ADL(日常生活動作)という指標があって、得点が高いほど1人でこなせる動作が多く、得点が低いほど介護が必要になってくるのですが、環境のデザインによってADLは変わってくるんですよ。分かりやすく安全なデザインは、自分自身で動作ができる手助けになりますし、逆に分かりにくいデザインは危険ですし自立の機会を奪ってしまうとも言えます。たとえば、「手すり」が目立ちにくいと何かあった時に掴むことができないのですが、目立ちやすいと何かあった時にとっさに掴まることができるんです。無意識でそこに「ある」とわかるようにデザインが必要なのです。あと段差やスロープも同じで、デザインで知らせる必要があります。

中川:そうすると、福祉や介護の現場では、安全性が何よりも大切ということになりますね?

南:そうですね。いちばん大切なのが安全性、その次に楽しさや心の豊かさに配慮する、それが「ユニバーサルカラー」ですね。
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中川:ところで南さんは、介護と色に関する本を2冊出版されていますよね?こちらをご紹介いただけますか?

南:はい。これまでに「介護に役立つ色彩活用術」「介護力を高めるカラーコーディネート術」の2冊の本を執筆しています。福祉に色はどう役立つのかを、私の実体験から魂を込めて書いた本です。

中川:2つの本はどう違うのでしょうか?

南:「介護に役立つ色彩活用術」の方が総論的で、「介護力を高めるカラーコーディネート術」の方がより各論的、具体的な内容になっています。

中川:今までユニバーサルカラーに関するお話を伺ってきましたが、「ユニバーサルカラー」を一言で表現するとどうなりますか?

南:「年齢や障害を問わず、すべての方に利益をもたらすもの」です。利益とは、快適さだったり楽しさだったり心の豊かさだったり、QOL(Quality of Life=人生の質)を高めるような要素をもたらしてくれるものです。
カラーユニバーサルデザインの第一人者の方とお話していた時に、「南さん、僕はユニバーサルカラーと概念はないと思っているよ。だって、ユニバーサル=すべての方が対象ってことでしょう?目が見えない方はどうするの?」と言われたことがあったんです。

中川:えぇ!?それはまたすごいご指摘ですね。
一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会
南:でも、言われてみればその通りですよ。少し前に、mixiで先天的に目が見えない方と繋がったことがあるのですが、その方曰く「自分は茶髪にしている。たぶん目が見えていても茶髪にしていたと思うから。」と仰るんですね。周りの方からは「目が見えないのに茶髪にしてもしょうがないじゃん。」と言われたそうなんです。でも美容師さんに「目が見えないけど茶髪にしてください。」とオーダーしたところ、「この方だったらこうするだろう」というのをすごく考えて染めてくれたそうなんです。その話を聞いていて、「目が見えない方は、色について学ぶ機会がないのかも」と感じたんです。「赤」や「青」という色があるんだよ、ということは教えてくれるそうなんですが、それがどんな色なのかまでは教えてくれないそうなんです。例えば「茶色」というと、お茶から連想して「苦そうな色」だと感じるそうなんです。

中川:味覚のような他の感覚と関連付けていくしかないんですね。

南:だから、「ユニバーサルカラー」を完成させるためにも、ライフワークとして取り組んでいくことが必要だと感じるようになりました。

中川:南さん、とっても興味深いお話、ありがとうございました。次回は、昨年2010年に開発された「クリスタルカラーセラピー」についてお話を伺いますね。

(2011.8.29 一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会オフィスにて)






一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会

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コンセプト:
子供から高齢者まで快適に暮らせる色彩環境、カラーデザイン、色によるメンタルケア手法の開発研究及び提案。


メニュー・サービス・商品:
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所在地:153-0051 東京都目黒区上目黒1-2-11 藤和中目黒コープ201
アクセス:東急東横線・日比谷線中目黒駅より徒歩3分, 東急東横線代官山駅より徒歩5分
営業時間:10:00-18:00
定休日:土曜、日曜日(講座開催日は除く)
問合先:
  電話 03-3719-5673
  FAX 03-3719-5674
  メール unica@universal-color.jp
  問合フォーム http://www.cctherapy.jp/f_mousikomi.htm
Webサイト1:一般社団法人 日本ユニバーサルカラー協会 オフィシャルサイト
Webサイト2:クリスタルカラーセラピー オフィシャルサイト
ブログ:色彩日誌blog






一般社団法人日本ユニバーサルカラー協会

南 涼子さん

一般社団法人 日本ユニバーサルカラー協会理事長。
日本セルフアートケア(SAC)研究学会監事。
健康検定協会理事。
明治大学公開講座講師。
広告制作会社で企業イベントなどの業務に携っていたことから色彩の重要性を知り、色彩心理、配色理論、色彩計画、パーソナルカラー分析、色彩指導を学ぶ。1997年に文部科学省認定ファッションコーディネート色彩検定一級試験に合格後、高齢者施設・医療施設の色彩計画、高齢者や認知症に対応する色彩の研究に取り組み、特別養護老人ホーム・ケアセンターにてカラーワークセラピーの指導、実践を行う。
主な著書は、「介護に役立つ[色彩]活用術」(現代書林)、「介護力を高めるカラーコーディネート術」(中央法規)。