
ベニスに死す (1971) イタリア 監督:ルキノ・ビスコンティ
年老いた芸術家が若い美少年を好きになってストーカーするという映画。
「可愛いだけじゃダメですか?」
いや、可愛いだけで十分。
っていうか、「容姿がすべて」っていう嫌なメッセージを発する作品。
片や、顔がキレイなだけで頭空っぽ中身のない薄っぺらな子供。
片や、高度な知性と深い教養、豊富な人生経験を積んだ老芸術家。
単純に「美」を競うのが芸術なら、芸術家はかならず敗北する運命にある。
美なんてわざわざ創作しなくたって、美しいものは自然界にいくらでも転がっているから。
深淵な教養と文化歴史を背景にした芸術家の難解な作品より、顔が綺麗なだけが取り柄の美人ギャルのミニスカートの方に魅了されてしまうのが我々一般大衆。
だけど、芸術家までもがそうだなんて身もふたもない。
ヒゲを生やした爺さんが小便くさいガキに対して、乙女のように恥じらいながらモジモジウジウジする姿は、哀れというよりも情けなくてしょうがない。
生涯に渡って芸術を追及してきた結果がそれなの?プライドないの?ばかなのしぬの?
ストーカーする対象を美少女に設定すると単なるおやじだから美少年にしたんだろうけど(っていうか、ヴィスコンティ監督の個人的趣味からか)、かえってさらに変態度が増している。
普通の人の健全なエロ欲求を満たしちゃうと「猥褻」になるが、常軌を逸した異常な欲望を扱うと「芸術」っぽい扱いになるのもどうなんだろうか?
映像美の方はまあまあ普通という感じでそれより退屈感の方が強い。
やっぱりヴィスコンティ映像美の真骨頂はやっぱ『山猫』『ルートヴィヒ』とかの貴族系だなあ。
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カラヴァッジョ 天才画家の光と影 (2007) イタリア・フランス・スペイン・ドイツ合作 監督: アンジェロ・ロンゴーニ
悪夢のようなデレック版『カラヴァジオ』と違い、安心感のある美麗な映像。
建物も服装もちゃんと16世紀って感じがする。
ああー、気持ちいい。
でもなんというか、なんか、起伏がないというか、のっぺりしているというか、
「これを見ろ。どうだ!」って感じの飛び抜けた勝負映像美シーンがないんだよね。
・・・と思ったら、どうやらこれはTVドラマらしい。
元々TVドラマのものを時間をカットして映画として公開してるとか。
だからか。
カラヴァッジョの人格も、なんか普通のよくある女性を守る正義の人みたいな大衆向けヒーローキャラになっているのも気になっていたのだが、TVドラマということなら納得。
でも本作品、映画ファンの間では名画として賞賛されまくっている様子。
ということは、TVドラマをそのまま題目だけ映画として出せば立派に映画として通るということだな。
昔から「SFやファンタジーのようなVFXに金がかかりそうな映画はともかく、CGのないヒューマンドラマの映画ってTVドラマとどう違うのだろうか?」という素朴な疑問を持ち続けていたのだが、
これではっきりした。
TVドラマと映画に違いはなかった。
やっぱりな。
そうだと思った。



カラヴァッジョでもラストタンゴインパリでも、みなおんなじ感じのストラーロ映像。

綺麗で無難な映像美ではあったが、
カラヴァッジョらしい映像という意味では、気持ち悪いデレック版『カラヴァジオ』の方がそれらしかった。
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太陽 (2005) ロシア 監督: アレクサンドル・ソクーロフ
日本が戦争に負け、現人神だった昭和天皇が人間宣言をする様子を描いた映画。
存在は以前から知っていたが、なんだが地味そうなので観ないでいた。
ところが今回映像美を追求してると、タルコフスキーの後継者といわれるソクーロフにたどり着き、シネマトグラフィの中にこの作品が。
なんと、あの『太陽』がソクーロフだったのかとかなり驚いた。
といっても、ソクーロフ作品の中でも、これはヒトラー、レーニン、昭和天皇の権力者三部作の一つなので、派手にアーティステックな映像美が炸裂しているわけではなく、しっとり落ち着いたシックな感じの絵。
それでもやっぱり確かに普通じゃないのはわかる。
モノクロに近いギリギリのカラー。全編を通して明度も彩度も低いグレー調なのだが、灰色の映像の中にいぶし銀のような美がある。
御前会議。
色彩が渋い。


天皇が夢見た空爆シーンで、戦闘機の代わりに空飛ぶ魚が爆弾を落とすシーンはギョッとする。


ソクーレフが撮ると見慣れた皇居がこんなにアートな絵になる。
渋い。渋すぎる。
これがタルコフスキーの後継者と名高いソクーレフの才能なのか。


天皇とマッカーサーの対談。


月をみつめる天皇。

ラストシーンの天皇の人間宣言を録音した若者が切腹した話を聞いた天皇の反応にしみじみした。
そして、エンディングでようやく太陽が出てくる。
渋いな。
