ブログ休んでいるうちに、暑い夏がきた。実母は生きている。犬も生きている。老人ホームという温度調節されている環境にいた義母が亡くなった。生きてはいるが実母も犬も認知症だ。読んだ本をすぐ忘れる私も認知症なのか?認知症と正常の境目が分からない。ずっとそう思ってきたけれど、母をみていてわかった。時間が前に進まないのだ。

 

 

 

 

ミステリーというより人情物として真相を覆い隠すとは、直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞に納得した。ネタバレにならないように書いておく。

 

歌舞伎が江戸の町で人々を踊らせ華やぐ。吉原と並んで悪所と呼ばれる芝居小屋。そこを仕事場とする人達の事情が辛く悲しい。そして、親の仇とあだ討ちの使命を担って国を出た菊之助の、悲しいあだ討ちが成就する。人々の目に焼きつく姿が、まるで芝居のように語られる。

 

さて、このあだ討ちの役者を紹介しよう。出演者を真似たり芝居の中身を語ってくれる木戸芸者は客引きに大いに貢献する役どころ。立師はその名の通りえいやーと役者に稽古をつけてそれらしく立ち合いの姿を見せてくれる。かつては武家の三男。そして衣装部屋では、年老いた女形が衣装の繕い物をする。隠亡の爺さんに拾われ、やがてその女形に救われた小僧はきらびやかな衣装にその職人技を発揮する。舞台上では、子の亡きがらを黙々と作る小道具屋が亡き息子への思いを込める。

 

そして戯作者は、忠義と親孝行の間で揺れる菊之助の仇討ちを、見事一つの物語として書き上げた。拍手。

 

と言うわけで、ネタバレしないように書くと、読んでいない方には中途半端で分かり難いと思う。それにしても、江戸時代の木戸芸者というのが気に入った。これに代わるのがウェブサイトなのだから、情緒がないなと思う。しかし悪所とされた芝居小屋が連綿と現代まで続いたことは有り難いことだ。