フォローしている人が書いていたので、兄の断捨離箱から引き取ってきた。
本書は「女による女のためのR-18文学賞」を受賞しています。こういう文学賞があったのかと検索してみると著者の受賞インタビューが掲載されていて、興味深いことが書いてあった。『今の日本の女性を取り巻いている生活環境やライフスタイルと、体が本来もっている本能的なプログラミングは、あまりにかけ離れていて、そのせいで体と心がバラバラになってしまうことも多いのではないかと。別に妊娠なんてしたくないのに体は勝手に準備しているとか、子供が欲しいのに体は応えてくれないとか、その差違に振り回される感情を取り上げたいのです。体が本来持っている摩訶不思議さへの興味も小説でふれておきたいのです。』
なるほど、衝撃的な性描写で始まるこの物語は、確かにR-18かもしれない。私の年齢のせいかもしれないが、読み流してしまった。エロチックであることより摩訶不思議を追求していたのかもしれない。表現するということは、本当にむづかしいことだと思う。
さて、マンションの一室で、コスプレと台本を準備して高校生と不倫する妻。その妻の不倫を隠しカメラで撮影していた夫。この夫婦の歪みは過去にいじめにあったからだという。
この高校生は、妻を寝取られた夫の陰湿な仕返しに、不登校になってしまう。
さて、彼の再生の物語が始まるのかと思いきや、そう簡単じゃない。結局著者は何が言いたかったんだろう?
この高校生の友人は、母が出奔し祖母を養う貧困家庭にある。学校に行けなくなった彼を構ってはいられない。それどころ彼の傷に塩を塗りこむような行為に及ぶ。
彼のガールフレンドは、彼の相手が自分じゃなかったことに憤慨している。自分の中に生まれつつある欲望を解放したいのかもしれない。それに彼女の兄は秀才の名をほしいままにしていたのに、変な宗教にはまってしまってる。
この本は、10年以上前に出版されている。話題の本であったと記憶している。映像でもみられるらしい。だから色々な感想があるだろうなと思う。
著者が言いたいことが何となくわかってきたような気がした。もちろん私なりに。思春期に暴走してしまった人間の欲望。それを理性で抑えろといわれても、収拾できるわけなし。貧しい環境で育った友人の嫉妬。貧困家庭を抜け出すなんて不可能だ。環境を変えられない苛立ちが、彼の嫉妬心を刺激する。そんな彼に一筋の光を与えてくれたバイトの先輩は人生のオプションに振り回されている。この辛すぎる人生のオプションから抜け出すのもやはりむづかしいことなのだ。
ままならない自分。ままならない若者たち。
このままならない状況からいつか抜け出せると信じる母は、助産師として命の現場に立ち会い神聖な生を日々目の当たりにしている。母は無力だ。子の人生に母は無力なんだと思った。信じて待つという試練に母親は耐えなければならないのだ。陰湿な仕返しをした男の母親は、自分が無力であることに気づきやしない。だから偏愛するのだ。偏った愛情は、息子夫婦の人生に闖入する。そして憎しみという感情を増殖しながら、深く深く心の闇を作りましたとさ。
助産師の母がとてもいい。助産師の仕事に新鮮な感動を覚えてしまった。
何だか支離滅裂な読書感想文になってしまった。明日からまた老人介護。なので、このまま投稿してしまうことに・・・。