衝撃的な最後で終わった「悪童日記」その後は・・・・。

 

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さて、「悪童日記」では、ふたりがまるでひと仕事を終えたような口調で、別々の道を歩み始めることを日記に記した形で終わっています。そのうちのひとりは、祖母の家に残ります。このひとりに「リュカ」という名があたえられています。

 

祖母は二年前に脳卒中で亡くなり、町の人々の噂を信じるなら、祖父は祖母に毒殺されたということになっています。母は妹を連れてふたりを迎えにきた時に、庭の砲弾で死んでしまいました。そして、国境を越えようとしてふたりのもとにやってきた父は・・・・。

 

それぞれの死は「悪童日記」に詳しく、その後日談は「幼少期に受けた心的外傷に起因する神経症」になったリュカの生活を物語ります。戦争の爪痕は、人々の心を傷つけ、心は深い闇の中でさ迷い続けています。終戦は解放者によってもたらされ、教会は国家に切り離され、カフェは陰気な客のいない居酒屋に、そして体制を賛美しない本は禁書になっています。

 

リュカの心の闇は深く、何故か傷ついた人々の心に呼応し、引き寄せてます。

リュカが湖のほとりで出会った乳飲み子を抱いたヤスミーヌ。19歳で乳飲み子を抱えて途方にくれるヤスミーヌ親子を自宅に住まわせます。ヤスミーヌの息子マティアスは身体的には不自由ですが、頭脳は抜群です。リュカはこのマティアスに親のような愛情を注ぎ、その知性を育てることに熱中する反面、図書館を訪ねて出会った司書のクララと夜を過ごしています。マティアスの為に、図書館であれ本屋であれ、本を捜し求めます。本屋のヴィクトールは、ノートと鉛筆を頻繁に買う学童の頃のリュカを記憶してます。ヴィクトールからその友人で党書記のペテールを紹介され、公園を根城にしている不眠症の男とも知り合うことになります。

 

というわけで、リュカを取り巻く人々は、それぞれが体験した戦争の悲劇の中で、心に闇を抱え負のループで繋がっていたとでも言いましょうか。リュカの周りの人に、気を取られているうちに、悪童の正体がわかり、してやられた感があります。リュカが書き続けたその日記は、双子のもうひとりクラウスにとって大きな意味をもち、「第三の嘘」に続くようです。

 

この著者の筆力に抗えず、次作も読むつもりです。しかし、なかなか苦しくもあります。明るく楽しくそしてばかばかしいような本が読みたくなり、いま現実に起きているウクライナの状況を知るにつけ、現実逃避したくなります。人の心は弱く脆く、とりあえず、明日は老人介護に備えて、寝るしかないけど・・・・。

 

さて、来週は何曜日に更新しましょうか。目標は水曜日に。