たまに、亡くなった父親の夢をみる。リアルで怖いんですけどね。生前の父の強烈なキャラは微塵も感じられず、夢の中ではあくまでも優しい。

 

さてこの物語は、亡くなった父親に恋人がいたことが発覚。それを知った妻とその息子と娘たちの反応が気になって、手に取ってみると、以下ネタバレあり。

 

 

 

父親の一周忌の相談に集まる三兄妹。

 

恋人と同棲中の姉の野々と兄の春日に、妹の花は辛辣です。「愛だの恋だのによりかかってると、うわついた、中身のない人生を送ることになるんだって、根無し草みたいになっちゃうんだって」とまあ、潔癖で厳格そして堅物で、定めたルールで子供たちを縛り、男女間のことには過敏であった父親が目を光らせて育てただけのことはあります。

 

父親から自由になりたくて、さっさと家を出てしまった野々と春日。花は、父親の目線で姉と兄を捉えてることに気づいていません。姉の野々が働くパワーストーンの店を、インチキな商売だと断言し、職を転々としている兄を恥ずかしいと言ってのけます。そして母親は、父親が亡くなってから、無気力になり、些細な体調の変化で頻繁に病院通いをしています。

 

そう、母は知ってしまったのです。生前の父親に恋人がいたこと、そして浮気の痕跡まで発見してしまい、責めるべき相手が存在しなければ、怒りの矛先は収めようもなく、自分に向かってしまうのは当然です。

 

浮気相手の女性に「絶倫」と言わしめた父親。三人は父親の本当の姿を探す旅にでます。父がとっくに捨ててしまった故郷の佐渡島へ渡ります。

 

(以下ネタバレ)

 

結論から言えば、叔母も島の人たちも父の記憶が曖昧で、真面目で勉強ができたという父親像しかありません。父親が気にしていたという祖父の淫蕩な血も、島の人たちが面白おかしくした噂話の域をでないものです。両親が早く亡くなった為に、信憑性の低い人の噂に自分を重ね、人生を踊らされ、ストイックな生活を子供たちに押し付けたこの父親・・・大罪人です。私からみたらね。それに家を出た娘と息子にはとことん無関心で、死んだら女がいた?許しません。私が妻だったらね。

でも、三人にとっての父親探しの旅は、不確かな過去にこだわらず、いまの自分に真摯に向き合う生き方を教えてくれた意義ある旅であったのでメデタシメデタシで、まとまって終わります。浮気相手の女性からのご立派な手紙も、ハサミで切り刻んで「オマエに何がわかる?」と怒って物語は終わりますね。私が作家なら・・・・。私とはあまり相性のよくない小説でした。