前回のあらすじ![]()
いよいよ事故の真実?…小百合と美咲が動き出す
市長室のドアが静かに開くと、そこには窓から差し込む朝の光が、
「本日10時より、ボランティア団体『森の灯り』
市長は窓の外をぼんやりと眺めながら、小さくうなずいた。
「高木も同席させろ。山里町の件は彼が担当しているからな。」
秘書がメモを取りながら、軽く眉をひそめた。
「はい、承知しました。ところで、同行者は舞さんではなく、
その言葉が市長の耳に入った瞬間、彼の手がわずかに震えた。
「……っ!」
秘書が慌ててティッシュを取り出し、床を拭き始めたが、
「……小百合か。」
低い声で呟くと、彼は拳を握りしめ、唇をかみしめた。
「あの事故のことは、絶対に公表するわけにはいかない。
秘書は返事をせず、ただうなずいた。その空気の重さに、
一方、市役所の一角にある会議室では、
「市長室に呼ばれた? ああ、同席ですね。了解しました。」
電話越しの秘書の声に、高木は軽く眉をひそめた。
「美咲さんですよね? あのボランティア団体の代表の方。」
「はい、そうです。同行者は小百合さんという方と、
「……小百合さん?」
高木の手がわずかに止まった。記憶の奥底から、
「分かりました。準備しておきます。」
電話を切った後、彼は資料を抱え、市長室へ向かう。
市長室の前で、彼は美咲と小百合に出会った。
「あ、高木さん。こんにちは。」
美咲が笑顔で手を振ると、高木は軽く会釈を返した。だが、
「その方は……?」
高木の声がわずかに揺れる。
「え? ああ、小百合さんですよ。防災施設の件でお世話になった方です。
美咲はさらっと答えたが、高木の表情は硬いままだ。
「……あの事故のとき、お会いしていると思いますが。」
小百合が静かに目を伏せた。その表情には、
「では、後ほど。」
高木はそう言って、先に市長室へ入った。背中には、
美咲と小百合はその後に続き、
「大丈夫ですか?」
美咲が心配そうに尋ねる。
「うん。ただ、久しぶりに会うから、少し緊張してるだけ。」
小百合の声は、どこか遠く感じる。
エレベーターのドアが開き、二人は市長室の前まで来た。
「失礼します。」
ドアノブをゆっくりと回す。その音が、
ドアが開くと、そこには市長と高木がいた。
「……小百合さん。」
彼の声は、かつての記憶を呼び起こすように震えていた。
「久しぶりですね。」
小百合が微笑みながら、静かに頭を下げた。
美咲が不思議そうに二人を見比べる。
「あの事故のとき、高木さんもいらしてたんですよね?」
高木は答えず、ただ小百合の顔を見つめていた。
「……ええ。確かに、お会いしました。」
彼の視線の先には、
あのとき、彼女は「生きてはいけない」と言っていた。
「あなたは、なぜ生きた?」
そう問うた彼女の言葉が、今も耳の奥で響いていた。
市長はそのやり取りを黙って聞いていた。彼の視線は、
「……あなたは、あのとき、なぜここに来た?」
市長が初めて口を開いた。その声には、怒りとも、
小百合は静かに目を上げ、市長を見つめた。
「私は、崩落のことを、忘れないために来たんです。」
その言葉に、市長の表情がわずかに歪んだ。
「……忘れるべきだ。すべてを。」
高木はその言葉に、眉をひそめた。
「市長、山里町の開発は、
市長は高木を鋭く睨みつけた。
「お前の役目は、計画を進めるための資料を揃えることだ。
その場の空気が一気に張り詰めた。
美咲が小百合の手を握り、静かに言った。
「私たちの目的は、町の未来を守ることです。どうか、
市長は窓の外を眺めたまま、長い沈黙を守った。
やがて、彼は小さく息をつくと、静かに口を開いた。
「話してみろ。」
その言葉に、小百合はうなずいた。
「はい。私たちが伝えたいのは、山里町の過去と、
高木は資料を開き、市長に向かって語り始めた。
「この町には、ただの土地以上の価値があります。自然、文化、
小百合も続けた。
「あの事故は、町の歴史の一部です。それを隠すのではなく、
市長はその言葉を聞きながら、
彼の手は、再び震い始めていた。
だが、今度は怒りではなく、何か別の感情だった。
「……あの町には、もう戻れない。でも、
小百合の言葉が、市長の心に静かに刺さった。
沈黙の後、彼はゆっくりと目を閉じた。
「……話を聞かせてくれ。」
その言葉に、美咲と小百合は顔を見合わせ、ほんの少し微笑んだ。
高木も、胸の奥に広がる安堵を抱きしめながら、資料を広げた。
市長室には、朝の光が静かに降り注いでいた。

