道徳を重んじるかぎり、俺達はもう男ではない。男にもどるのは道徳を捨てる時だ。だから不倫というんだよ。
不倫なんだから、それぐらいの我慢は当然だ。大晦日も正月も一緒にはいられない。男が女房や子供と楽しく過ごしている様子を想像して苛々する。それが正しい愛人の姿なんだ。それが辛いならやめればいい。おまえがそんな事を心配がる必要はないし、気に病んだって仕方がないんだ。
恋愛していた頃のことを思い出せ。彼女のことを好きだったんだろ。この女しかないと思ったから結婚したんだろ。結局は同じことだ。今お前が夢中になっている女だって、おまえにとって特別な存在というわけじゃない。そんなものは最初からいないんだ。世界中のどこにもいない。赤い糸なんてものはないんだ。
自分の長所をアピールし合うのが恋愛なら、短所をさらけ出し合うのが結婚だ。もう相手を失う心配がないから、恋愛中みたいに、必死で相手を振り向かせようと努力することもない。
それでもみんな結婚に憧れる。結婚する前の僕だってそうだった。相手の愛を得るための努力があまりにきついので、安心したくて結婚したのだ。安心を得る引き替えとして多くのものを失うことに、その時は気づかなかった。
物事は立体的に見なければならない。一方向からの情報だけでは、真の姿はわからない。別の角度からの情報も必要だ。