ごとうしゅうぞうさんへ
初めまして。
私はあなたに会ったことはありませんが、あなたの娘に会いあなたをことを聞きました。
その話をもとにして手紙を書かせてもらっています。
その娘は、あなたと過ごした記憶はほとんどないと言ってました。
それもそのはず、あなたは妻と5歳、2歳、0歳のこどもを残し、31歳という若さでこの世を去ったのです。
あなたは『富山丸』という日本の輸送船の船員で、アメリカの潜水艦の魚雷によって沈没させられたのです。
その沈没船は、今もまだ鹿児島県徳之島の海の底にあるそうです。
魚雷を受けた後は船は真っ二つに割れ、海に燃料が漏れ”火の海”だったと聞いています。
あなたのお世話係の当時18歳の少年は、あなたが食べた弁当箱を洗いに船の看板にいたので、火の海へ飛び込みなんとか泳いで陸にたどり着き生き延びたそうです。
あなたが繋いだ命なのでしょうか…
今あなたは海の底にいるのか、海流の流れで乗船していた人たちが漂流した島で火葬されたのか、真実は分かりません。
あなたの娘に届いたものは、あなたの名前のところに置かれた”サンゴ”と受け継がれたこの話だけです。
あなたたちのおかげで、現代の日本は世界の中でもとても安全な国になりました。
あなたが亡くなり長い年月が経った今、あなたの娘も”あかちゃん”から”おばあちゃん”になりました。
娘の成長をみることができなかったことに後悔してることでしょう…
でも心配しないでください。あなたの娘もいい旦那さんに出会って2人のこどもに恵まれ、孫も3人います。
あなたの娘はあなたのことを誇りに思い、旦那さんやこども、孫にあなたのことをよく話しています。
そのときの彼女は、ありのままの自分を表現している無邪気なこどもの様です。
あなたの娘は今年もあなたに会いに、海の中に沈んだ船がある徳之島に行くそうです。
あなたは、まだそこにいますか?
いるのであれば、成長した娘の姿をみてあげてください。
私は、「人は忘れられなければ、死なない。」と思っています。
なので、私の中ではあなたはまだ生きています。おそらくあなたの娘のなかでも生きているのでしょう。
色々書きたいことはありますが、長文になりそうなのでまた書かせてもらいます。
ひ孫 より