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一戸兵衛の書


 一戸兵衛は、旅順攻防戦での第二回総攻撃の際、攻略が遅々として進まない(ただし、そもそも第二回総攻撃の戦略的目的は全体の要塞全体を陥落させることを目的としたものではなく、戦線全体の前進-何線かある防衛線の突破-でありその目的は達成した)中、無名であった盤竜山P堡塁(「一戸堡塁」と命名された)を奪取、さらに目的以上の突破を試みたという、戦略眼に富んだ勇猛さで有名な将軍です。後に教育総監にも就任。陸軍大将。
 一戸兵衛は奉天会戦後第三軍の参謀長を務めており、乃木希典は上官にあたります。お互い漢詩に造詣が深いと言うことでその面でも交流があったのではないでしょうか。また、乃木希典没後は「今乃木」と呼ばれた人でもあり、乃木将軍と同様に軍を退いた後は、学習院院長にもなっています。

 掲載した書は、一戸将軍の筆跡による乃木将軍の詩「凱歌今日幾人還」です。詩人としても優れていた乃木希典の残した漢詩の中でも特に傑作とされ、「山川草木」や「爾靈山」の詩と共に「「乃木三絶」と呼ばれる作品のうちの一つです。
 ちなみに、この書は、乃木将軍の筆跡を真似て書かれています。「兵衛」の落款がなければ乃木将軍の自筆書のようです。

皇師百萬征強虜   こうしひゃくまんきょうりょをせいす
野戰攻城屍作山   やせんこうじょうかばねやまをなす
愧我何顔看父老   はずわれなんのかんばせあってふろうにまみえん
凱歌今日幾人還   がいかこんにちいくにんかかえる
 
皇師百萬強虜を征す
野戦攻城屍山を作す
愧ず我何の顔ありて父老に看みえん
凱歌今日幾人か還る