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ジャック・ケッチャム『襲撃者の夜』扶桑社


四月末の新刊でしたが、ようやく読了。

翻訳者の金子浩氏が良いのかもしれないのですが、ケッチャムの描く舞台は牧歌的で、全く別のドラマが生まれそうです。少年少女の淡い恋などが描かれても全くおかしくない…美しい風景です。ところが、ケッチャムが、その背景のもとで描く事件は陰惨で極めて趣味の悪いものになってしまいます。この小説も例外ではありません。

本書は『オフシーズン』の続編で原題『オフスプリング』。前作で生き残りの少女が成長して新たな食人鬼集団をつくり、前作同様な猟奇的事件を起こします。それに立ち向かうのも前作で警官だったピーターズ。かれはすでにリタイアしているものの前回の経験を買われて捜査協力という形で登場します。

ケッチャムには、あの強烈な救いの無い名作『隣の家の少女』があるので、それに比べるとはるかに読みやすいものになっています。もちろん、例によってあっさりと殺されるものは殺されてしまいますし、食べられるものは食べられてしまいますが、この理不尽な運命に立ち向かおうと人たちもいて、感動します。というか、「よかったね…」とほっと息をつけるというか…(笑)

何せケッチャムですから、不幸中の幸いのようなわずかな救いの結末でも大いに感動するということでしょうね。