ソフトカバーの単行本で、小口を含め黒に統一された装丁です。
「東京郊外の旅館土砂崩れで生き埋めになりながらも奇跡的に一名を取りとめた「生還者」たち。その生還者が、一人また一人と変死していく…、これは何かの呪いなのか、あるいは、一人称で語られる主人公が何らかの関与をしているのか、それとも…」というストーリーです。何よりも主人公がそれらの事件に巻き込まれながら心身が耐え切れなくなって壊れていくという記述が読むものに恐怖を与えます。従って、私は間違いなく「その主人公によるサイコ・スリラー」であると確信をもって読み進めていました。
…しかし…(笑)
これは変貌していく主人公の心理はどこへやら、言ってみれば先日ご紹介した乾くるみさんの『イニシエーション・ラブ』のような叙述トリック的な要素が強い…。『イニシエーション・ラブ』と異なり、何か叙述的なトリックを仕掛けられているとは感じられはするものの、私は最後まで見抜けませんでした。
でも、そのスーパーナチュラルな要素のない現実的な結末に、それまでの恐怖がどこかへ飛んでしまったではないか。うーん、こんなんで良いのか…? いや、真相はもっと深いところにあるのかな…?