

マダム・ホワイト(しろねこさん)校長の『本楽大学ミステリ学部』に入学したことに伴う第一回レポートです。
ミステリのベスト5を作っているつもりが、完成してみれば、モダンホラー系ベスト5になりました。
ミステリのベスト5を作っているつもりが、完成してみれば、モダンホラー系ベスト5になりました。
やっぱり、ここはHaruはHaruらしく、それにマダム・ホワイト校長が、ご親切にも「ミステリ蒐集の極意!」というテーマも付加いただいたので、その路線で初版本もしくは限定本データも載せます。これらの初版本というのは、クラシックなものと違い比較的手に入れやすいものが多いです。それに、お気に入りの本は是非ともその初版本か限定本で持っておきたいと思うのが蒐集家ごころですので、どうしても購入してしまいますよね。
今回第一回目は作品に対する簡単なコメント。古書情報は第二回目の続編に書きます。
第一位 トマス・ハリス『羊たちの沈黙』(1988年)
映画はその上映期間中に二度観に行き、原作をこの作品に関しては三度読み…、というように、主人公(?)ハンニバル・レクター博士の特異なキャラクター造型に魅入られてしまいました。彼の精神的影響化にあるものも数多く、直接的・間接的に猟奇的犯罪を創造していく全能の神。従って、その犯罪の解決までもが彼の手に委ねられる…。 第二位 シャーリイ・ジャクスン『山荘綺談』(1959年)
言わずと知れた、幽霊屋敷ものの傑作。翻訳(ハヤカワ文庫版)も優れているのが理由でしょうが、全編、得体の知れない恐怖に身震いします。文章の一行一行が鳥肌を立てさせる、という経験ははじめてでした。決して、残虐な場面が描かれているわけではないのですが、他では味わえない心理的な怖さがこの小説にはあります。幽霊屋敷もののベストスリーは、この作品以外には、マシスン『地獄の家』、キング『シャイニング』と思いますが、やはり『山荘綺談』にはかなわないと考えます。
第三位 リチャード・マシスン『地球最後の男』(『吸血鬼』)(1954年)
吸血鬼もの、ゾンビもののエッセンスがこの一冊に凝縮されているような傑作。キングの『呪われた町』とか『ペット・セマタリー』も傑作だと思うが、吸血鬼を現代に甦らせ、自分以外の周りの世界が死者に満ち溢れるという「ゾンビ映画」のイメージの端緒となった、という意味でこの作品を外すわけにはいきません。なお、最後に、実は主人公こそが周囲の「人間」を殺戮する怪物であった、と気付く場面がなんとも言えない深い余韻を残します。
第四位 ディーン・R・クーンツ『悪魔は夜はばたく』(1977年)
作者には失礼ですけど、限りなくB級に近い娯楽サスペンスものの傑作と個人的に考えている作品です。『ウィスパーズ』とともに著者がベストセラー作家になろうしている頃の作品で、このころの少し猥雑な作品が、キングのようにはじめから重厚さを備えた作家とは違って、ポルノ小説をはじめとして多くのジャンルを手がけてきたクーンツの魅力だと思っています。この他では、『悪魔の種子』(『デモンシード』)が絶品です! 第五位 F・ポール・ウィルスン『マンハッタンの戦慄』(1984年)
ラヴクラフトの血を引くオカルト伝奇ホラーものといえば、この小説。始末屋ジャックというキャラクターが魅力的な、異形のものが登場する極上のB級ホラー。「始末屋ジャック」シリーズの初編にして、「ナイトワールド」シリーズの二作目。 次点 ダン・シモンズ『カーリーの歌』(1985年)
これは、非常な問題作で、インド的なものへの差別めいた書き出しから、到底考えられない悲惨な出来事がありつつも「暴力の連鎖」を断ち切ろうとする努力を示す最後の場面まで一気に読ませます。題材の深刻さから娯楽作品という感じがあまりしません。やりきれない生の恐怖が伝わってくる作品です。上の第四位、第五位とは対極にある作品。…モダンホラーとすれば、ケッチャム『隣の家の少女』、レイモン『殺戮の野獣館』、レイ・ガートン『ライヴ・ガールズ』、あとポピー・Z・ブライトも…などスプラッタ系が抜けていますね。番外のお薦め本として…二人の御大の作品。
番外 ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』(1989年)
その苦痛を読者が感じてしまう故、読み続けるのが困難、それでもページをめくるのが止められず最後まで読んでしまうという因果な小説。ただ、現実世界ではここに描かれた以上の救いのない犯罪が行われてしまっているのが悲しい…。 番外 リチャード・レイモン『殺戮の<野獣館>』(1980年)
結末に衝撃(笑撃)を受ける脅威の一篇。鬼畜で下劣な小説でありながら、読書の楽しさは失われていません。同じ鬼畜でも『隣の家の少女』とは大きく異なります。としておきましょう。古書ネタは一部リンクしました。その他の情報は次項に続きますが、シャーリイ・ジャクスン『山荘綺談』(初版1959年)の書影のみ載せておきます。