【Perfume パロSS】 春愁 | Perfect Performer Perfume

【Perfume パロSS】 春愁


三浦哲郎(みうらてつお)さんの「春愁」を、

Perfumeの3人をモデルに若干改ざんしてみました。←

問題があったら削除します。。

この恋愛模様は好き!



アトマイザー劇場のごとく、のっちとかしゆかは男役です。


●登場人物●

由良→大木 (のっち)

藤尾→樫尾 (かしゆか)

奈緒→綾香 (あ~ちゃん)


広島弁・・・ニワカですがググったりしてそれっぽくしてみました。

広島の方、こんなしゃべり方しねーよふざけんなwwと思ったらどうぞご指摘ください。

ところどころ細かい描写をPerfume風に変えてあります。※後述


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 大木は、生家のあるこの町の隣の市の高校へ通っていたころ、樫尾といっしょにサッカーの選手をしていた。

その高校のサッカー部では、四季に一度ずつ二十日間の合宿練習をするのがならわしで、そのときはいつも練習場に近い紅鯨寺(こうげいじ)という寺を宿泊所に借りていた。


その紅鯨寺の門前に、西脇(にしわき)という花屋があった。

西脇は、もともと住居も花を栽培する温室もこの町にあって、毎朝、花をライトバンで市の店へ運んでいた。

紅鯨寺の門前にある店も、市に何軒かある西脇の出店のうちの一軒であった。
その店には、西脇の一族だという中年の女性がひとりで住んでいたが、そこへ西脇の娘の綾香が同居するようになったのは、大木たちが三年に進級した春からであった。


綾香はその年、市の女子高校へ入学したので、通学に便利なように出店の一軒に住むことになったのである。
大木も、樫尾も、綾香のことはその前から知っていた。

二人は、合宿練習のとき以外は毎日町の生家から通学していたが、脚力を鍛えるために朝は二人いっしょに八キロの道を走って登校することにしていた。

もちろん、二人ともサッカー部の練習着姿で、教科書の入った鞄は自転車通学の下級生に運搬役を頼んでいた。

学生服は、学校の部室のロッカーに泊めておいて、必要なときにだけ着替えるのである。
そのマラソン登校の途中――といっても、まだ町を出てまもなくのあたりのことだが、毎朝同じところですれ違う自転車通学の女子中学生がいた。それが西脇綾香であった。

 こちらは町から隣の市の高校へ通っているが、綾香のほうは町の外の農場から町の中学校へ通ってくる。

毎朝顔を合わせるから、どちらからともなく笑顔で朝のあいさつを交わすようになっていた。

あいさつばかりではなく、「ええ天気じゃねぇ。」とか、「ひと雨来そうじゃなあ。」とか、「暑いねぇ。」とか、そんな短い言葉を交わすようにもなっていた。


綾香はいつもセーラー服をきちんと着て、髪は三つ編みにして肩から前のほうへ垂らしていた。

小麦色の肌をして、目が大きくて、頬のふっくらとした健康そうな女の子だった。
大木は、樫尾にも内緒にしていたが、そのころから綾香に好意を抱いていた。


大木にとって、一日の日課のうちで朝のマラソン登校ほど楽しみなものはなかった。

彼は知らぬ顔をしていたが、向こうから綾香が近づいてくると、胸の鼓動が異様に高まってきて、それがすぐ隣を走っている樫尾の耳に聞こえやしないかと気になった。
それで行く手に綾香が見えてくると、さりげなく樫尾との間隔をひらく。

樫尾はまっすぐ走っているのだから、間隔をひらくためには大木のほうでどちらかの道の端へ寄らなければならない。


 そんな場合、綾香の来るほうへ寄っていくという厚かましい芸当は、彼にはとてもできなかった。

綾香から遠いほうの道端へ寄る。すると、綾香と樫尾が自然に接近して、あいさつを交わし合うということになる。
大木は、そんなことになるのが自分のせいなのに、ひそかに悩むようになっていた。

樫尾に軽い嫉妬をおぼえ、そのためにますます綾香に心をひかれるようになっていた。

二年生になると、大木の綾香に対する気持ちはもう好意の域を脱していた。


三年生になると、とたんに綾香はぱったり姿を見せなくなった。

最初は病気かと心配したが、そのうちに、あの子、中学校を卒業したのだと思うようになった。

けれども、卒業してどこへ行ってしまったのかはわからなかった。どこかに就職したのだろうか。
 綾香と会わなくなったことを、先に口にしたのは樫尾のほうであった。


 「あの自転車通学の女の子、どうしよったんじゃろう。」


走りながら樫尾は独り言のようにそう言った。


 「さあね。」


と大木は素っ気なく応じた。


 そのときの大木としては、綾香に対する自分の気持ちをだれにも感づかれまいとして、せいぜい無関心を装うほかなかったのだが、そのために彼は、樫尾もまた綾香に対して自分と同じような気持ちを抱くようになっているということに、全く気がつかなかった。





 春の合宿で紅鯨寺の宿舎に入った日の夕方、買物に出ていた樫尾が駆け戻ってきて、


 「おい、見つけたぞ。」


と大木の肩を叩いた。
 樫尾はただそう言っただけだったのに、瞬間、何が見つかったのか大木にはわかった。


 「どこにおった?」


大木は思わずそう言った。


 「灯台もと暗しじゃ。門のすぐ前の花屋じゃけ。」


大木は顔に血が昇ってくるのに気がついて、続けざまに空咳をした。それから、つまらなそうに、


 「なあんじゃ。」


と言った。
 けれども、夕食が済むと、やはりいちど門前の花屋へ行ってみないことには眠れそうもないという気がしてきた。それで、


「ほんじゃ、ちょいとあいさつだけでもしてくるかいの。これから二十日間、近所づき合いをするわけじゃけぇな。」
と樫尾に言って、大儀そうに寺の石段を降りて行った。





明るい花屋の店先が、まぶしかった。綾香は彼を見ると、ぱっと笑って、首をすくめた。

髪は三つ編みをやめて、洗い髪のように背中へ長く垂らしていた。

ずいぶん大人になった、と彼は思った。


 「こがぁところにおったんですね。どうしよったんかと思っとった。」


普通に話したつもりだったが、舌がちょっともつれてしまった。


 「今度、女子高に入ったんです。」と綾香は言った。
 「おめでとう。」
 「ありがとう。」


彼は、自分の顔は見えないから、綾香の顔を見て、この子、赤くなってる、と思った。


 「僕ら、サッカー部じゃけ、きょうから二十日間、向かいの紅鯨寺で合宿なんよ。」
 「そうですってね。夕方、樫尾さんから聞いとりました。」


彼は、綾香の口から樫尾の名が出たことにぎくりとして、反射的に、


 「僕、大木っていうんじゃ。」


手のひらに、指で大木と書いてみせた。指先がふるえた。


 「あたしは綾香っていうんよ。」


綾香もそう言って、手のひらに指で書いて見せた。

人差し指を毛筆に見立てたような、どっしりとした書き方であった。彼は感服した。
 そのとき、店の奥から中年の女性が、


 「いらっしゃいませ。」


と言って出てきた。
大木はあわててあたりを見回し、水仙を指さして、


 「これ、ください。」


と言った。


 「はい、水仙ね。何本?」
 「一本。」
「一本?」


と中年の女性は目を丸くした。


 「一本じゃ、駄目ですか。」
 「いいえの、駄目ってこたぁないけど……。」


 すると、綾香がくすっと笑って、水仙を一本抜き取ると、


 「はい、こりゃあ差し上げます。プレゼントじゃ。」
 「いや、しかし、それじゃ……。」


と彼は急いでトレーニングパンツのポケットに手をやったが、そこには財布が入っていなかった。彼はひやりとした。


 「いいんじゃけぇ。こりゃあどうぞ持っていきんさいや。」
 「ほうですか。じゃ、今度だけ……どうもすみませんでした。お邪魔しました。」


 つづけてお辞儀を二つして、きのこ頭をなでながら外へ出た。それから、さっきはもつれにもつれた舌を、夜風に向かってひらひらとそよがせてみた。


 彼は、綾香にもらった水仙を牛乳瓶に差して、枯れても構わずに合宿が終わるまで自分の枕元の出窓に飾っておいた。




 合宿の最後の晩、反省会をした。それが済むと、解散になって、みんなは荷物をまとめて自分の家に帰ることになる。
 大木と樫尾が引き揚げようとしたときは、もう夜も遅い時間になっていて、綾香の花屋の店は閉まっていた。そこを、お互いに無言で通り過ぎて、しばらくすると、


 「わしゃあ決心したよ。」


唐突に樫尾がそう言った。

なにを決心したのかと思うと、


 「わし、あの花屋の娘、嫁にもらう。」


 もし、相手が綾香でなければ、大木は派手に吹き出してやるところだったが、花屋の娘と聞いて息がつまった。


 「合宿でそがぁことを考えとったんか。あきれたやつじゃな。

 わしらは当分サッカーのことだけ考えとりゃあいいんじゃ。嫁なんて、気が遠くなるほど先のことじゃけぇ。」


 「ほいでもなぁ、おれはやっぱり宣言しとくよ。

 あんなええ子は、そうざらにゃおらんはずじゃけぇな。わしゃあ、あの子を嫁にもらう。」


 大木は、圧倒されて黙ってしまった。大木に悶々の日が始まった。
 夏の合宿のとき、「鉄壁のカシノチオ」といわれた大木と樫尾の仲がしっくりいかなくなった。

グランドのプレーでも、合宿の生活でもそうだった。けれども、サッカーはチームワークが大切である。

樫尾を選ぶか、綾香を選ぶか。大木はそれを考えて夜も眠れないことがあった。


 考えに考えた末に、結局、大木は、いまの自分には仲間のほうが大切だと判断した。

花屋の娘なんか樫尾にくれてやるのだと、彼は自分に言い聞かせた。


 彼は、大木に対して急に無愛想になった。道で顔を合わせても、わざとそっぼを向くようになった。

夏の合宿の終わりごろのある晩、大木に電話がかかってきた。寺の奥さんから電話だと知らされたとき、大木はてっきり、心臓をわずらっている母が死んだのだと思った。

 ところが、出てみると、相手は綾香であった。ぜひ相談に乗ってもらいたいことがあるのだが、ちょっと店まで抜けてきてもらえないだろうかと綾香は言った。


 「お店には、いま、あたしひとりなんじゃ。」


 用があるなら、そっちから出かけてくればいい。

そう思ったが、もし現実にここへ綾香が自分を訪ねてきたら、合宿は大騒ぎになり、これまでの自分の苦心は水の泡になってしまう。

 彼は出かけて行かないわけにはいかなかった。
 行ってみると、なるほど綾香は店にひとりでいた。

綾香の相談というのは、樫尾のことで、樫尾がしきりに恋文をくれるのだが、どうしたものだろうかという相談であった。


 「そがあことは、自分で判断すればええ。樫尾がいやなら、いやだと返事を書きゃあええ。」


 彼がぶっきら棒にそう言うと、


 「樫尾さんがいやっていうわけじゃないけど、樫尾さんよりもっと好きな人がおるけぇ困るんじゃ。」


と綾香は言った。彼は頭にかっと血が昇った。


 「そんなら、そいつに相談すればええじゃないか。何も僕なんかを…」


 「じゃけぇ、いまその人に相談しとるんじゃ。」


と綾香は言った。


 彼は、耳を疑った。けれども、綾香はもうなにも言わずに、大きな目でまっすぐ彼を見つめていた。

彼は体がふるえてきた。

えらいことになったと思った。実際、彼はちらと恐怖のようなものを感じた。



 「ばか。そがぁことを言っちゃいかんよ。」

と彼は言った。

 「なして?……なしていかんの?」


 「いかん。どうしてもいかんよ。そがぁばかな……僕はもう帰る。」

 彼は花屋を飛び出すと、一目散に寺の門へ駆け込んだ。

石段の途中まで駆け登って、それから杉木立のなかへウオーッと吠えた。

ウオーッ、ウオーッと、勝ち誇ったけもののように何度も吠えた。

自分でもわけがわからなかったが、彼はとてもそうして吠えずにはいられなかった。

 おかしなことに、そのことがあってから、彼の綾香を思う気持ちがまるで憑きものが落ちたようになくなってしまった。

 卒業間際に、本当に母が死んで、大木は大学に行くのが二年遅れた。

樫尾のほうは、順調に東京の大学へ入学し、サッカーを続けて花形選手になり、望み通りに”花屋の娘”と結婚して、一児をもうけた。

 けれども、不運なことに、まだ三十という若さで癌に命をとられてしまったのである。



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かしゆか、のっちのお母さん、死なせちまってすまん!!!!!!笑


※ 玄海寺 → 紅鯨寺 (baby cruising love → べ~にく~じ~ら~)

  ぼうず頭 → きのこ頭

  絶妙のコンビ → 「鉄壁のカシノチオ」