祖父さんのこと | 溺れる深海魚の嘆き

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田舎町で暮らす一般人女性です(´-ω-)
ADHD+ぽんこつ心臓+希少血。
婦人病のベテラン患者でもある。
可愛い旦那と猫たちを手厚く看取るまで元気でいることが人生の目標です。

じつは私の実家、昔はけっこう古くさい家柄でありました。

私が生まれた時から祖父だと思ってたのは、祖父の弟にあたる人でした。実の祖父が30そこそこで借金を山ほど遺して亡くなったので、弟たちの中から「まだ独身で一番お金稼げる甲斐性あるやつ」として選ばれ、祖母と結婚させられたらしいです。

まだ独身とはいえ、婚約してた彼女はいて、東京で同棲してたのだそうな。
彼女さん、急に婚約者の兄が亡くなったので、一緒に駆けつけてお葬式も手伝ってたのに、いきなり婚約者の親戚一同に囲まれて「結婚は諦めて欲しい。家を守るためだから堪えてくれ」と手切れ金を少しばかり渡され、泣く泣く帰っていったという…酷いお話。
もちろん本人も抵抗はしたのだろうけど、親や親戚一同に囲まれて寝るも食うも許されず昼夜あの手この手で説得されたらもうね…そして自分の知らないうちに婚約してた彼女は帰されていなくなってて。

だから私が生まれた時、その「祖父」はまだ40歳にもなってなかった。

実の子が一人もいない…兄の子が沢山いたから諦めたみたい…だからかもしれないけど、私は「祖父」にとても可愛がられました。
生きてる間中いっぱい心配してくれて、結婚する時も「お前のために積み立ててきた」と、びっくりするほどの額の持参金を持たせてくれ…さすがにもう一円も残ってませんけどw…すごくありがたかったです。義理の仲とはいえ「孫」として生まれた中で、そんな扱いを受けたのは私一人でした。

いつか恩返ししなくてはと思ってたのですけど、遠くに嫁いで帰省もなかなか出来ないうちに「祖父」は六十九歳で急死してしまいました。

三十代になっても子供がいない私をいつも案じてくれてましたが、本当の理由は言えないままでした。

大腸ガン、心筋梗塞とふたつの大病を乗り越えて、糖尿病の治療をしつつ暮らしていた「祖父」の命を奪ったのは重症急性膵炎という難しい病でした。

お酒も飲まず(若いころはいっぱい飲んでたけど病気してやめた)タバコもやらず(若いころは…以下同文)暴飲暴食もせず、健康にいいと聞けば色々な食材を取寄せて試すような生活してたのに。

医師には原因不明と言われましたけど、しいて言えばもとは糖尿病かなぁと思ったりもします。

初めての曾孫(正確には兄の曾孫)が生まれたばかりで、倒れた日の昼間は機嫌よくベビーカー押して子守り散歩してたそうです。

夜半、トイレに何度も起き、吐いたり下したり、そのうち痛みで七転八倒するようになったので、祖母は救急車を呼びました。
近くのクリニックへ搬送され、レントゲン撮って腸炎かなと点滴やら痛み止めやら色々したのに痛みがまったく取れない。そこでクリニックの医師が「膵炎かもしれない。もしそうなら一刻を争うので大きい病院へ今すぐ搬送します」と言うので、朝になる前にまた救急車で隣市の県立病院へ。
そこですぐ詳しい検査したら確かに膵炎で、もうまわりの臓器に影響及ぼして重症化しつつあると判明しました。

三時間ぐらいして、専門医のいない県立病院ではもう難しいと判断されたため、高度な治療が受けられる大学病院へ、またしても救急搬送となりました。

この時もう、家族は「助からないかもしれません」と告げられていました…痛み止めの点滴がようやく効いて、本人は見た感じまったく普通に元気そうだったので家族の誰も信じられない気持ちでいたそうです。

救急車を追いかけるように、家族も高速で一時間半かかる大学病院へと急ぎましたが、みんなが着いた時はもう全身麻酔をかけられて「危篤」ということでICUで管理されていました。

最後に話したのは大学病院のある市に住んでいた弟で、知らせを受けて早退し、先回りして救急車が到着するのを待っていたのですが、頑張れとしか言えなかったことを後々まで悔いていました。

その時の状態は、膵臓がとろけて膵液が腹腔内に広く漏れだし、腎不全、心不全、肝不全、呼吸不全のありさまでした。

膵液というのは簡単にいうと消化液です。
つまり、自分で自分の内臓を内側から消化してしまっている状態…短期間でここまで重症化した例は珍しいと言われました。
国内で最高の治療をしていますとのことでしたが、家族の誰もがもう助からないだろうと覚悟しました。 

丸一日前まではふつうに元気だったのに。

人工呼吸器を着け、人工透析までしていましたが、病状は良くなりませんでした。
ただ心臓が強かったらしく、その状態のまま三日も頑張ってくれて、遠くの親戚も亡くなる前に駆けつけて励ましたり色々な言葉をかけることは出来ました。
もちろん全身麻酔(鎮静というのかな?)のままだったので、意識がなくて会話も何も出来ませんでしたが…

午前と午後に一回ずつ面会できて、そのたびだんだん肌が黄色くなり、黄疸が出てきているのはもう肝臓が限界なのだろうと…更にどす黒くなって浮腫みがひどくなってくると、腎臓ももう駄目なのだなと素人ながらにわかりました。

亡くなったのは朝。
夜明け前に病院から連絡があり、弟の部屋に泊まっていた私と家族は急いで向かいました。
前日まで力強く動いていた心臓が、ついに弱々しくなっていて、血圧は60を下回っていました。

何度か心電図が止まりかけ、そのたび皆で呼びかけるとまた動き出し、それを何度か繰り返した後、父が泣きながら「もう楽にしてやろう」と言いました。

今までありがとうなどと口々に声をかけ、最後は集まっていた家族親戚それぞれ涙にくれ名を呼びながら看取りました。

亡くなった後も黄疸が引くことはなく、どす黒く黄色い肌のまま「祖父」は荼毘にふされました。
それ以外は特に痩せてもいなくて、ガッチリ体型で若々しく健康そうな姿でした。

重症急性膵炎は国の指定する難病で、治療経過や色んなデータを提供する代わりに治療費は助成されます。
でもたぶん、この病気を知らない人の方が多いかもしれませんね。

しばらくは死が信じられず、悲しかったけど、実家に行けばまだそこにいるような、そんな感じがしてました。


と、まぁ、祖父さんはこんな最後だったのですけど、別観点の話しますわ。

膵臓なんて、あんまりポピュラーな臓器じゃないのに、私のまわりにはけっこういまして…義祖父と義父が膵臓ガンで他界、友達がやはり重症急性膵炎で亡くなっていて、飼い猫も膵炎を患いました(今は元気!)
今のところ四人と一匹。
どうしてなのでしょうね…だから何となく、お腹痛い時など膵臓じゃないかと不安になったりもします。

膵炎の原因はアルコールなことが多く、次に食べ過ぎ
が来るそう。祖父さんはどっちでもなかったけど、友達はアルコールが原因だった。

医者は言わないし医療サイト見ても原因とされてもいないけど、もしかしたら糖尿病あると…って思ってもいます。
それでなくとも糖尿病は怖い病気です。
私も旦那も、血統的には糖尿病になってもおかしくない体質なので、日々お食事には気を使ってますよ…野菜嫌いじゃないのが幸いですね🥦