右肩がずっと凝っていました。
僕はそれを揉んだり叩いたりして、
何とかほぐそうとしていたんです。
原因は何かと考えれば、
それは不景気でうまくいかない仕事か、
言うことを聞いてくれない彼女か、
寝心地の悪いベッドか、
そんなことしか浮かばなかったのです。
原因を何とかしようと躍起になっても、
余計におかしくなるばかりで、
もうこの肩凝りとは、
上手にお付き合いするしかないと、
ちょっと諦めていました。
だってほら、
誰にだって持病みたいなものの、
ひとつやふたつ、
あるものでしょう?
肩凝りぐらいで死ぬわけじゃないし、
我慢できることならすれば済むこと、
そう思っていたんです。
凝りが酷いときは、
つい眉間にしわを寄せたりしてしまうけれど、
仕方ないじゃないか、
それだけ僕は、
毎日一生懸命頑張っているのだよと、
自分に言い聞かせながら、
過ごしていたわけです。
それが。
肩凝りが、
なくなったんです。
不思議なくらい、
すっと、
なくなったんです。
憑き物が落ちるというのは、
こういうことなんじゃないかと思いましたよ。
朝起きたら、
普段は石のような肩と首が、
羽根のように軽くなっていて。
その前日は休日で、
僕は歯医者に行きました。
歯並びをほんの少し整えて、
噛みあわせをよくしてもらって、
その後、
帰って部屋の掃除をしました。
忙しくて、
なかなかできていなかったことでした。
部屋にはいらないものがたくさんあり、
ごみ袋に5つ分のがらくたを処分しました。
処分している途中に、
母の写真が出てきました。
小学生の僕と、
まだ若い母の写真でした。
母とはもう何年も話していないことに、
気がつきました。
心のどこかで、
僕は彼女に対して恨みがましい感情を、
抱いていて、
ろくに話すらしてませんでした。
そこで、
田舎の母に、
電話をしました。
何の用だね?
と、
相変わらずの憎まれ口をたたかれながらも、
また顔見せなさいと言われ、
普段なら、
忙しいんだよ。
と、
返しているだろうところを、
ありがとう。
と、
返していたんです。
きっと、
噛みあわせがよくなったからに、
違いありません。
それだけです。
肩凝りがなくなってからというもの、
僕の周囲は変わっていきました。
人ともめたり、
いらいらしたりが減って、
時間にも余裕ができているように感じます。
人のせいにすることをやめると、
とても楽だということにも、
気がつきました。
自分が気にかかることを、
すぐに片付けるようになりました。
自分ひとりでできないことに、
無理をしなくなりました。
悩んで夜更かしも、
しないようになりました。
それを彼女に話したら、
とても喜んでくれました。
そしてそんなことを、
心から幸せだと感じています。
こんな話を長々と、
聞いてくださってありがとうございます。
では、
これから仕事に行ってきます。
