<29th Jan Mon>

パリ旅行備忘録が終わったら、3末月の日本行きを考えるので、どんどん行きます。 二つ観たオペラのうち最初の。

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1月20日にパリのガルニエで観たのはヘンデル最後のオラトリオ「イェフタJephthaのフル・オペラ版。

なにも、英語だし歌手もイギリス人が多いのをわざわざパリまで観に行かなくてもという気もしますが、日本とオランダからいらっしゃるオペラ仲間さんとお話も出来るし、滅多にオペラには出ないボストリッジ博士も観たいし、「仮面舞踏会」のついでに行ってみました。

 

4年前にバービカンで一度聴いたことがあり(→こちら)、その時の記事から内容についてコピペすると、

ナイフ旧約聖書に出てくるお話で、古代イスラエルの武将イエフタは「この戦いに勝てたら、帰還して最初に出迎えてくれた人を生贄にするから」、と無責任に神に誓ったところ、あちゃーっ!現れたのは「お父さん、お帰りなさ~い」、と喜ぶ自分の娘・・・。

で、聖書では娘は殺されてしまうのだけど、このオラトリオでは最後に天使に救われるんです。ヘンデル時代のキリスト教的考えでは、一生を神に捧げるのは素晴らしいことと信じてそういう展開になったのでしょうが、今なら恋人もいるのに生殺し状態じゃ残酷過ぎると思うのが当たり前ですから、この新プロダクションも娘の苦悩が強調され、更に同情を買います。

 

晩年のヘンデルが視力の衰えに苦しみながら作曲したこの最後のオラトリオは1751年にヘンデル自らの指揮でロンドンで初演され、ヒット・アリアはないけど、いわゆる軽やかで華やかなヘンデル節とはちょっと違う深みのあるしっとりした名作ということで、珍しく四重唱もあるのですが、なんせ話の展開がのろくて、前半のイエフタが戦いに行くまでがやたら長く、歌手は皆さん上手なのに、かなり退屈しました。 最後にやっとドラマチックになって盛り上がったのですが、セットも衣装も動きも暗いしシンプル過ぎて、プロダクションは地方の歌劇場レベル。

 

William Christie Conductor  
Claus Guth Director  
Katrin Lea Tag Set Designer, Costume Designer  
Ian Bostridge Tenor Jephtha
Katherine Watson Soprano Iphis
Marie-Nicole Lemieux Contralto Storgé
Tim Mead Countertenor Hamor
Philippe Sly Bass-baritone Zebul
Valer Sabadus Countertenor Angel
Les Arts Florissants    

上から見下ろす安い席だったので、いつものように顔を大袈裟に歪めて熱演してくれた蚊トンボ博士(ボストリッジ)のいつもの大袈裟な表情がしっかり見られなかったのが特に残念。 声はよく出てたし、細身の長身に長いコートがよく似合って素敵だったけど。 口惜しいので、バービカンの来シーズンの博士の思い切り暗そうなリサイタルの切符を買ってしまいました(指揮はパッパーノ)→こちら)。

 

カウンターテナーのティム・ミードも、他の人同様、始まってしばらくしたら声がよく出て、立派なパフォーマンスでした。 素晴らしかった男性二人に比べると、娘と母親は少々影が薄く、いつもは迫力の低音のマリー・ニコール・レミュ嬢は声が乾いてたし、妊娠中の娘役キャサリン・ワトソンも遠慮がちに聞えました。いえ、彼女たちも充分上手だったのですが、絶好調ならもっと良いのを知ってるので。

 

がっかりだったのは、初めて聴いたカウンターテナーのサバドゥス。 天使役で可愛かったけど声量不足で、同じCTのティム君とは雲泥の差。 彼をよくご存知のレイネさんによると、いつもこんな感じだそうで、更に失望。