




山頂に立つと
遮るものとてない風が
肉体を射貫いて去っていく
草原は緑の波をうねらせ
見えない風を具象化する
緑のレースを身にまとった
醍醐桜が悠然と
首をかしげていた
人っ子ひとりいない昼間
巨木をぐるりと囲む回廊
レースの影がゆらゆら
ロープで繋がれた柵に
蝉の抜け殻が脱ぎ捨てられていた
時満ちて脱ぎ捨てる
我が肉体に思いを馳せる
もはや不必要な
古き肉を脱皮するのは
真に自由なことかもしれない
とも思う
回廊に流れて垂れ下がる枝
結ばれた一葉一葉は
虫喰いだらけ
天空の巨木は
夥しい虫たちを受け入れ
養っていた
風を透かす緑のレースは
パーツそれぞれもレースという
念の入れよう
緑のレースは風を泳ぎ
蝉時雨が追っかける
執着も愛着も色気も
風に洗えば
見える景色もまた
違うのだろうか
夏が風に乗って
去ろうとしていた





