砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹


好きって、絶望だよね。


ということで、

『新・2大「あー、川村って、その人好きそうだよね」と言われる作家』

の一人である、桜庭一樹女史である。

ちなみにもう一人は有川浩女史であり、更に言えば前述の通り

王様のブランチでよくわかんない女が紹介してそうな

流行の小説はできるだけ避けているので、

お二人ともそんなに数は読んでいません。


とはいえ、まあ、どちらもつまみ食いはさせていただいているわけですが、

今回は『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』です。


もう、タイトルからして、


ラノベ感満載。厨二病丸出し。(褒め言葉)


それもそのはず、それまで桜庭さんは完全にラノベの人だったのだ。

(よく考えたら、ラノベ出身二連チャンだな)

デビューはゲームのノベライズですよ。しかもアークザラッド。な、懐かしいっ。

これも、初出は富士見ミステリー文庫からの刊行です。

ただ、単行本のあとがきによると、依頼があっての原稿でなかったそうです。

どうしても書きたくなって一気に書いて、書き上げて途方に暮れて、

当時の担当者に見せたら、刊行してくれることになったそうです。

と、あっさりと書いていますが、きっと色々ドラマがあったことでしょう。

書き手(筆折りリハビリ中)でもある川村としては、もうそのエピソードだけでぐっと来るもんね。

書きたいという衝動というか作家の本能に任せて書いた作品が、

日の目を見てじわじわと売れ続けて、

一般文芸にフィールドを広げるきっかけになるなんて、小説書きとしてこんな嬉しいことはないでしょう!


……で、中身である。

ストーリーは、というと、もう、冒頭を見ると、まさに厨二病丸出しで、

自分は人魚とか言っちゃうエキセントリックな美少女の転校生『藻屑』と、

引きこもりの美少年の兄を持った、『実弾』を求める主人公『なぎさ』の話。

どう考えても『藻屑』(念のため言っておくが、名前だ)は

相当アブない、イっちゃった女の子なんだが、

おかしな嘘にも全部理由があって、

本当は方法を知らないだけの、コミュ障の普通の中学生というのが、とても哀しい。


いきなり、ヒロイン『藻屑』の死の描写から始まる。

そこから、なぎさ(女の子だから厳密には彼女がヒロインなんだが、

まあ私の主義みたいなもんだからそう表現させてくれ)が藻屑と出会った1か月前と、

1か月後の『今』の描写が交互に出てくる。

とても、映像的な書き方だと思う。

最初は、ちょっと読みにくいなあというか小説らしくないと思ったし、

(映画の場面転換をそのまま落とし込んだみたいな、なんつーかシナリオっぽい)

本筋である『1か月前』の描写が、『今』の描写に分断されるから、

私なら絶対こういう書き方は避けると思う。

なんだけど、『過去』と『今』の時間の進み方が違うから、

だんだん本筋が『今』と一致してきて、

何の事だかよくわからなかった『今』が、

それこそモノクロに色がついてくるように、はっきりと状況が見えてくる。

もう、そうなると、『今』のなぎさと視点がシンクロするような感覚になります。

もう、すごい。ストーリー自体ぶっ飛んでいて(褒め言葉)、

それもすごいんだけど、この、世界に引き込む引力が、すごい。

私、今回この感想文書く為に再読(少なくとも三度目だと思う)しましたが、

ストーリー頭に入ってるし確認の流し読みのつもりがガン読みですよ。そして号泣ですよ。

ネタバレも何も、冒頭で結末はわかってるんだけど、その結末に向かっていくのがつらい。


ぜひ、二度見をお勧めします。二度目は結末とか、藻屑の『奇行』の理由とか、

『今』のなぎさの視点から読めるので、一回目読むのとまた違って感覚で読めます。

映像的と言いましたが、二回目は最初からはっきりと『絵』が見える!

少なくとも川村には見えた!


しかしこの人といい有川浩といい、

ラノベ出身の作家さんが一般で活躍するなんて、一昔前には想像してなかったなあ。

(ん? 次は有川浩作品という伏線か? 川村?)

百瀬、こっちを向いて。/中田永一


最近、読みました。

はっきり言って敬遠してたんですよ、

『話題になった恋愛短編集』的なものを。

王様のブランチでどこの馬の骨ともわからん

え、お前、本なんか読むの?みたいな女が

お勧めしちゃうような本のことを!


いや、面白かったです。

え、お前、本なんか読むの?みたいな女でも(しつこい)

読めそうな本ではあるのですが、とても描き方が丁寧です。

大して事件は起こらない(いや、起こってるんだけどね、

私が日ごろ読んでいるアクの強いものと比較して)のですが、

日常の描き方や、脇役の人物描写、すごく魅力的です。

少し文体に癖はあるので(後述)、それが辛抱ならん、という人は厳しいかも。


解説にもありますが、甘すぎる恋愛小説はちょっと、という人にも読みやすいと思います。

(ソースは小生)

この本には4つの中編が収録されているのですが、

その主人公たちがみんな、ちょっと社会の下層の人間です。

(『百瀬、~』の主人公ノボルの言葉を借りれば、レベル2の人間)

いや、『なみうちぎわ』の姫子ちゃんは

無遅刻無欠席の優等生だし、

『小梅が通る』の”小梅”は、ジュニアモデルをしていたほどの美少女なんだけど、

こと『人付き合い』に関しては、ヒエラルキーの下のグループ。

オーケストラで言ったらビオラ、合唱で言えばメゾソプラノ。(失礼)

とにかく、花形グループとは対角にいる、地味で目立たない『その他大勢』です。

だから、突然モデルになってくれと言われたりF4が取り合ったりしない。(雑な知識)

前回紹介した『ワーキングガール・ウォーズ』もだったんですが、

大きな変化や大きな奇跡は何も生まれないけど、

地味で臆病な主人公が少しだけ前向きになって、少し大人になる、そんなお話たちです。


最後に。

私、恥ずかしながら全然知らなかったんですが、

この『中田永一』、あの『乙一』の別名だったんですね。

ものの本によると(何だよ)『百瀬』の発表が2005年、

で、2011年に『中田永一=乙一』と発表しているようです。

私、乙一さんの作品を読んだことがないのですが(食わず嫌い)

ファンの間では『これって乙一じゃねえ?』ってずっと言われてたようですね。

文体に乙一さんの特徴が表れているようです。

結構、平仮名を多用してます。

意図してでしょうが、

平仮名が読みづらいほど多い個所と、

普通に漢字が多い個所と偏りがあるので、クセはありますね。

いや…実は、敬遠してたんですよ。


だって名前が乙一ですよ。


厨二病かよ。(実際デビューが17歳なんだから厨二病だったんでしょう)

ま、まさか、こんなナチュラルな話を瑞々しく書く人だったとは…。

これから、乙一さんも、読もうと思います。反省。

つーか、意外と本名公開してるのね、乙一さん…。

ワーキングガール・ウォーズ/柴田よしき


さて、記念すべき第一弾ですよ。

読書録といっても、『読んだよー。面白かったよー。了』というわけにはいかんので、

過去に読了済みのものは軽くでも読み返さないといかん。

ひとまず、最近読んだものにすればいいんだが、

せっかくの第一弾なので、絶対この人の作品にしたかった。

それが、柴田よしき女史である。


新刊が出るたびに平積みにはなっているんですが、

読書好き以外には知名度は低いかな?

第一弾ということで、どれにしようか迷ったのですが、

読み直しが必要だったのであまり重すぎず(自己都合)、

だけどできるだけ柴田女史らしく、

けれどもあまりアクが強くなく…ということで、

『激流』や『観覧車』と迷った挙句、この作品にしました。


そもそもこの作品が私の柴田先生バージンなのですが、

忘れもしない長堀のブックファーストで、

何か読みたいなと思い平積みになっていたこの作品、他を手に取ったのが始まり。

(私の記憶が確かならば、『他』とは唯川恵と藤堂志津子だった)

ラインナップを見て分かるように、

『今まで敬遠していたような、現代物の、女性作家の、

事件といえば痴情のもつれ程度の、

連続ドラマ的なノリのそういう小説を乱読してみよう』と思っての、ジャケ買いでした。


で、この作品です。まずこの表紙。そして裏のあおり文句。

『三十七歳、、未婚、入社十四年と十か月。

~(略)~働く女性のリアルな本音と弱音がここにあります。』


この財前直見感ったら!


まさかこの人が、ヤクザと刑事の同性愛を書いてるなんて思わないよね!!

…こほん。


お局といわれる女性係長が主人公。

仕事もできる。お金もある。マンションも買った。

だけど職場では、頭痛の種が、いっぱい。

新卒の小娘ちゃんは人のこと目の敵にするし、

やってらんねーよっ!……まあ、お仕事小説ですね。

なんですが、ちょっとミステリ的な要素が加わって、

(最初に読んだ時は知らなかったのですが、

柴田女史のデビューは警察小説、しかもかなりハードボイルド。

そのほか、ミステリ、サスペンス、SF、ホラーと、とてつもなく幅の広い作家さんでして、

小手先とは一味違う、ライトながらしっかり味の付いた謎です)

読み応えは十分。

連作ながら、50ページ×7話+αで、

一話ずつでも読んでいけるので、気軽に読めます。

この作品を読んで、しみじみ思うのが、


『女の敵って女だな。だけど、女の味方も、女なんだな』


ということですね。

普段がつがつミステリなどを読まない人も、

柴田作品の中では比較的読みやすいと思いますし、

逆に重いものを読む人にも、

表紙の雰囲気ほど軽くないと思います。

特に働く女の方なら、なんだかんだで

色んなものに足を引っ張られながら社会で戦っている女の方なら、

どこかしら共感ポイントがあるんじゃないでしょうか。


だってこれは、働く女たちの、闘いの記録ですもの。