君へ。
私は、君が育ってくれればそれでいいのだ。
上に立つものとしてはいけないけれど、一人の人生の先輩としては、そういう思いでいるのだ。
きっと君はいつか、現場をはなれる日が来るだろう。
でもその時まで、やりたい仕事を精いっぱいしてほしいのだ。
私もいつか、現場をはなれる。それは、ちからがないからだ。
許されるなら、私もずっと現場にいたいが、それよりも、
もっと輝くちからと根気のある人が最大限働けるように、力を尽くしたいと思っている。
そしてそれは、君のことだ。
これでも私は、君のことを評価してるし、ある種の尊敬もしているんだよ。
できればそのちからを、のびのびと拡げられるように、わがままに育っていってほしいのだが、
君の繊細さや過ぎた優しさが、それを妨げることを、私は懼れている。
人のこころは、その人がこれから歩こうとする道に似ていると、私は思う。
強いこころは、しっかりかためられたアスファルト。
それは、無神経に踏み鳴らしても、どんどんと前にすすめるだろう。
だけど君は、きっとそうじゃない。
私は、君が弱いこころだなんて思っていないのだが、
とてもやわらかいこころだとは思っているよ。
しっかりと耕された、やわらかであたたかな土。
だけどそれはふとした拍子で簡単に踏み荒らされたり、雨に流されたりしてしまうね。
私は神様ではないので、君を脅かす全てのものから君を守ることはできないけれど、
小石を除いたり、それくらいは、してやりたい。
だけど踏み固められた土に鍬を入れて、空気を入れて、日光をあてて、
そんなことができるのか、あまり自信はない。
それでも君がもし、私にそれを求めるならば、いくらでも力になろう。
そして、君の影になっている、大きな枷があるね。
いつかそれは、君の未来をふさぐだろう。
私はそのことが、とても悲しい。
だからできるならば、少しでもその日が遠くなればいい、
そしてその時まで、君に精いっぱい、大きく育ってほしいのだ。
いつまでも、私と君は一緒にはいられない。
できるならばそばにおいて、君が大きく育つ様を見届けたいのだけれど、
それはきっと、叶わないだろう。
今、もしも、明日私がここを去るとして、何も未練はないのだけれど、
心のこりがあるとすれば、君のこの先をそばで見られないことだ。
だから私のねがいは、私が君のそばにいられる間に、
君がもう一歩、この先へ進むことなのだ。
もしも君が少しでも私の思いを感じているならば、
『姉』のねがいを叶えてはくれないだろうか?
どうか、心に留めておいてくれ。







