イタリアオペラの見方とは? | オペラ歌手くみバードの、ひたすらオペラな人生

オペラ歌手くみバードの、ひたすらオペラな人生

主催している「ありどおろ座」オペラ団の情報や合唱の練習など音楽家としての生活です。

先日ボローニャ歌劇場が来日し私の大好きなテノール、アルヴァレス氏がマウリツィオを歌いました。

ところが、私は体調が良くなく行けなかったのです。残念無念!

そこでどうだったか行った人に感想を聞いたのですが・・・

うん?なんか違うなあ~

私がおかしいのかと思ったのですが相方も私と全く同じ意見でした。

どうしてこういうことになったのか?

発声や舞台上の考えも同じ方向を向いていると思っていたのに?

まず、アルヴァレスはレジェンドです。出て頂けるだけでおんの字な存在です。

またこの年でマウリツィオを歌うなんてとてつもなく大変なのです。何が大変かと言うとブレスにとって大事な肺が動くのに時間がかかるからです。

その為に最初アペルトで歌って大量に息を通したり(これは結構危険でわかってないとダメ)、1オクターブ下げてケチったり(器用な人間しか出来ない)、懸命に微調整しながら歌っていく訳です。

まあ彼は昔からやってましたけどね。これは彼の敬愛するディ・ステファノと同じ手法です。

今の歌手、特にイタリア人じゃない歌手は何でもいいから高音は出す、音楽的じゃないけどとりあえずきっちり歌うのが多いから四苦八苦して何とか身体をならしている姿に違和感を覚えるのかな。

またオケもきっちりなんか合いません。微妙にズレズレです。むしろきっちり合ったら気持ち悪いです。その代わり人間的なドラマがあります。一見バラバラのに同じ方向に向かっている。

私にはそれが非常に面白くまるでスリルとサスペンスの様にワクワクします。

私の友人のTさんはこのトスカの感想が私達とほとんど同じでした。流石に外国で沢山オペラを見られていて確かな耳を養われたのだなと思いました。

私達はアスリートと同じです。舞台上で格闘しています。どう格闘しているかわかったらもっと楽しめるし真実が見えるでしょうにね。