九州時代4 | オペラ歌手くみバードの、ひたすらオペラな人生

オペラ歌手くみバードの、ひたすらオペラな人生

主催している「ありどおろ座」オペラ団の情報や合唱の練習など音楽家としての生活です。

何となくの成り行きで桐朋を受ける事になりましたが、
転校した中学では音楽高校の情報が全くなく、
桐朋って何ですか?とかまたは
ピアノが弾けるってどの程度なの?受かる訳ないじゃない、
といった扱いを受けました。


ところがいざ受かってみると、コレはたいへんだ、この学校から初めて入った、といった具合で
職員室に報告に行くと先生達が大騒ぎでみんなが抱きついてきたのには驚きでした。


しかし簡単に合格した訳ではありません。
私はとにかくきちんと練習する事が苦手でした。
天から稲妻の様に感動する閃きが落ちて来ないと弾く事が出来ないのです。
こんな私を周りは怠け者と言いました。


受験曲はシューマンの「Abegg変奏曲」でしたが案の定何も感じる事が出来ませんでした。
トロトロ無味乾燥な練習を続ける私にあきれ果てた母はある日その曲のレコードを買って来ました。
誰の演奏だったか忘れましたがそれを聴いた瞬間、電撃が走りました。
「えっ?コレってそういう曲だったの?」
そうなるとどんどん勢いがついて人が変わった様になります。

こうなるのが受験の直前だったので
「どうして急に弾ける様になったの?」と随分後まで教授に不思議がられました。
これはイメージの問題だと思います。
今、若い人にどんな曲なのかまず名演奏家を聴きなさい、と口を酸っぱくして言っているのは、
イメージが無ければ演奏する事が難しいからなのです。


すっかり入寮手続きを済ませた後に東京転勤の内示が出ました。