落ち込んだときはカート・ヴォネガットのエッセイを読む。
とくに『 国のない男 』が好きで、いつでも読めるように側に置いている。
これからしばらくは副作用があんまり出ない抗がん剤探しの旅頑張ろう。
感受性テストで何個かヒットしたし、再発防止での服薬だから、きっと何かしら合うのがあると思いたい。
何個かヒットしただけでもラッキーじゃないか!
ゼロックスともゼローダともうまく付き合えたんだから、きっと大丈夫。
自分の病気の性質上「 根治 」は目指してない。あくまでも「 共存 」でQOL下げずに長生きできれば充分だ。
『 国のない男 』で好きな一節。
“ しかしわたしにはいいおじもいた。もう亡くなったアレックスおじさんだ。父の弟で、ハーヴァード出身で子どもがなく、インディアナポリスでまっとうな生命保険の営業をやっていた。本好きで、頭がよかった。おじさんの、ほかの人間に対するいちばんの不満は、自分が幸せなのにそれがわかっていない連中が多すぎるということだった。夏、わたしはおじといっしょにリンゴの木の下でレモネードを飲みながら、あれこれとりとめもないおしゃべりをした。ミツバチが羽音を立てるみたいな、のんびりした会話だ。そんなとき、おじさんは気持ちのいいおしゃべりを突然やめて、大声でこう言った。「 これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ 」
だからわたしもいま同じようにしている。わたしの子どもも孫もそうだ。みなさんにもひとつお願いしておこう。幸せなときには、幸せなんだなと気づいてほしい。叫ぶなり、つぶやくなり、考えるなりしてほしい。「 これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ 」と。 ”
『 国のない男 』
カート・ヴォネガット著。
NHK出版より。