夜、病室のベッドで寝ているとき、ふと足元に重みを感じた。
目を開けるとうちの猫が寝てる!
よーく見ると、葉っぱ柄の布団カバーが猫耳に見えて、それが猫に見えたらしい。
人間は三つの点があると顔として見る、という話があったな…と思いつつそのまま寝た。

次の日見舞いに来た母に「 猫たちが恋しすぎて布団カバーの葉っぱ柄が猫に見えちゃったよ 」などと話していたが、実はこの頃からせん妄が見えていたのだった。


時系列がはっきりしないけれど、その頃レントゲンの結果で胸水が溜まっていることがわかり、急遽管を刺すことになった。
相変わらずショッピングモールやゲームセンターへ置き去りにされている感覚があったので、処置室へ運ばれたときも、なぜか部屋の中に大量の可愛い雑貨が見えた。
管を固定するテープは可愛いマスキングテープに見え、「 T先生は可愛いもの好きなんだなあ 」などと思っていた。
せん妄と夢のおかげで管を入れる痛みがあまりなかったのはありがたかった。

病室に戻るとまた夢を見た。
実は今いる病院はバブル期に建てられたホテルで、バブル崩壊後しばらく放置されたのち、増改築を経て今の病院になったのだ。
その時間経過が目の前で早送りになって見えてきた。
ホテルのわたしがいる部屋はちょうど窪地の一階にあるため水に浸り、気がつくとベッドが水に浮いていた。
そして時の経過とともにコポコポいいながら水が引いていく( 後でわかったが、胸水を抜く機器の音だった )。
目の前の光景はジュール・ベルヌの『 タイムマシン 』さながらに、時間が早回しされてどんどん変わっていく。
カーテンは3Dプリンターで作ったみたいに、下からどんどん編まれて行く。
床の水も完全になくなり、病室の床になった。


この頃から視野がおかしくなってくる。

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上で夢を、下で現実を見はじめる。
夢を見ながらも、深夜の看護師さんの巡回の懐中電灯の灯りを見ていた。


そして気がつくと、自分は夢の世界を歩いていた。

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暗い夢の中、黒猫のぬいぐるみを抱えて歩いて行くと、何やら賑やかな場所がある。
なんと!オンラインゲーム場だった。
( 自分は普段オンラインゲームもやらないし課金ゲームもやらない )
知らないうちにそのゲームの世界に迷い込む。
普通に遊ぶには無料だけど、特別なことをすると現実世界に請求書が届くという。
ゲームの中では自分と同じように入院中の人もいた。
個人情報がバレると危ないよ、とアドバイスをもらい手首のIDを必死に隠してさまよった。
ゲームオーバーになると長い列に並ばされ、ベルトコンベアでどんどん運ばれる。
運ばれる先は目が覚めた現実世界。
でもコンベアに乗ってる間に少しでも話をしたりすると見張りのバイトに見つかり、またゲームに戻されお金がかかるという。
とにかく、ぎゅーっと必死に耐え現実世界に戻っていくか!と思ったら、そこは最初にいた暗い夢の世界だった。

そこにはいろんな人の夢があった。
自分はいろんな夢を渡り歩いた。
カルタンは何の夢を見ているだろう?と行ってみると、「 カルタンはあなたの夢を見ていません 」との声。
見てみるとモンスターと戦ってしかも負けそう!
カルタンがちょっとネガティブなのは、こういう夢を見るからかもしれない!と、自分はその夢に入って行き、カルタンに気づかれないように、あたかもカルタンがモンスターを倒したかのように夢を操作した。
「 これでカルタンも自信がつくはず! 」と満足な気分で他の夢を渡り歩く。

延々エレキを弾いてる夢、イタリアの工房、一番人気のある夢はスティーヴ・ジョブズを讃える夢だった。

そしてさまよう中で、同じように夢を行き来できる女の子と知り合う。
リアルな世界でも会おう!とTwitterIDを交換しあった。


まだまだつづきます。