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ソウル市が今夏、一九八八年のソウル五輪以来、二十年ぶりに犬肉料理店の衛生検査を行った。欧米の「野蛮な食習慣」との批判を意識した当時とは異なり、食の安全への関心の高まりが背景にある。犬は法律上、家畜でないため、食肉処理などが定期的な衛生検査を受けていない点に着目した方針転換だが、動物保護団体は「食用合法化への免罪符だ」と批判する。 (ソウル·築山英司)
韓国の犬肉料理「補身湯(ポシンタン)」は、肉を野菜と一緒に煮てスープにしたり、湯がいたりして食べる。日本の土用の丑(うし)のウナギのように、七-八月に三回ある「伏日」に食べるスタミナ料理として、鶏にもち米などを詰めた参鶏湯(サムゲタン)とともに定着している。
ソウル市は、八四年の告示で、「国際都市としての品位維持」などを理由に、補身湯を「嫌悪感を与える食品」リストに加え営業を禁止。八八年の五輪まで大規模に取り締まった。だが、以後は告示が死文化した。国会では犬を畜産物加工処理法の家畜に含める合法化の動きもあり、行政は黙認してきた。
それが今年一月、ソウル市長の肝いりで食品安全課を新設。一般飲食店許可で営業している犬肉料理店などに狙いを定めた。市内五百三十店のうちインターネットで宣伝中の店を選び、七月十五-十八日に十六店で衛生検査を行い、62·5%の十店で調理場衛生不良などを指摘した。メディアは「犬肉料理店の営業を現実的に認める措置」と報じたが、李海雨(イヘウ)課長は「放置されていた犬肉の安全性問題を市民のために確認している」と、合法化への一歩とする見方を否定する。
動物保護団体はソウル市内などで相次ぎ活動し、犬や鶏の写真を印刷した袋をかぶるなどして「伴侶動物の食用根絶」を訴えている。動物保護市民団体の活動家は「英国のキツネ狩りが禁止されたのも最近のこと。『人類の友』の犬まで食べるのは駄目だという普遍的な常識を持つメディアや政治家の出現を待ちたい」と話した。
<韓国の犬肉人気> 「精力のもと」として男性を中心に人気は根強く、女性の支持も少なくない。専用農場で食用犬が飼育され、公式統計はないが、消費量は年間約200万匹との推計もある。一昨年10月公表の政府調査によると、国民の55·3%は食べた経験があるという。民間機関が今年7月に行った世論調査では、国民の53·2%が犬食用合法化に賛成、25·3%が反対した。男性は7割近くが賛成するのに対し、女性は賛成37·5%、反対33·1%と拮抗(きっこう)した。