沖縄尚学
忘れられない夏になった。17歳の春はエース、26歳の春は監督、44歳の夏は再び監督で日本一になった。沖縄尚学・比嘉公也監督(44)は「生徒たちの頑張りに尽きると思います」と力を込めた。指導者として何より胸を張れる言葉だった。
愛知学院大在学中に左肘を痛めて指導者を志し、高校社会の教員免許を取得した。卒業後は県職員として浄水管理事務所に勤めながら、沖縄大で地理と歴史の免許を取った。「教員になっていなければ高校野球の指導者になってはいなかった」。グラウンド上だけでなく教室でも生徒の顔を見守り、育成につなげた。
試練も知る。06年6月の監督就任から3カ月後、部内の暴力事件で対外試合禁止処分を受けた。翌春センバツ出場の可能性が消滅した。指導方針が周囲の理解を得られないこともあった。13年12月には打球を目に受け、陽光が苦手になった。壁にぶつかるたび、温かく心豊かな指導者になっていった。親交の深い駒大苫小牧(北海道)の佐々木孝介監督(38)は「公也さんに『我慢だぞ』と言われると、頑張ろうという気になります」と語る。
部活のない日は高校生、中学生になった娘たちの塾の送り迎えに車を走らせる。一方で、祖母からは幾度となく沖縄戦について聞かされてきた。内容が悲惨になるにつれ、祖母の口調は重くなった。「こういう大会があること自体がまず、平和だからできていること」。日常のありがたさを知っている。だからこそ、指導にも妥協はしない。
「全員の能力を最大限に引き出した上で勝てた、というのが一番の理想」と究極を求め続ける。春夏の優勝旗に、まだまだ巡り合う人だろう。
引用 日刊スポーツ
夏の終わりに聴きたくなる
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