「吹田自分史の会」では会員が自分史の断片を書いて提出した作品を月例会

朗読工房の方に読んでもらってみんなに披露しています。それらの作品の中

から、梅田米大が感動した作品を時を見ては掲載していきます


  ボロ船万歳                       作・路名 想


一人の兵隊が「見えたぞ! 救助船が見えたぞー!」と叫んだ。

 思わず皆は「バンザーイ」と声を上げ抱き合って泣いた。泣きながら服を脱い

でちぎれんばかりに振る。強風に身体が吹き飛ばされそうだ。だが、波間に見

えた救助船は間も無く消えた。あゝもう駄目だと観念したとき、救助船はまた現

れた。だがまた見えなくなる。消えては現れ現れては消える。こんなことが何か

あったが、しばらくすると海防艦がわれわれの方に向かってきた。 

 海防艦の水兵がわれわれ五名を引き揚げてくれた。遭難から救助されるまで

実に二十四時間の苦闘はここにようやく終ったのである。

 引き揚げられた甲板には私たちより先に救助れた兵隊がたくさん寝ころんで

いたが、同期生の顔は見当たらなかった。

 海防艦で食べた温かい粥は何よりのご馳走だった。救助された多くの将兵と

に五島列島福江港に入港した。島の小学校を仮宿舎として村民の人たちの

かい手によってわれわれは再び、帝国軍人としての威厳を徐々に取り戻して

いった。


  数日後、海軍の船で佐世保に入り、陸軍の重砲隊の藁の敷かれた馬小屋

を宿舎に、生存者およそ三百名の将兵と一週間生活を共にした。この生存者

中、私を含め五名の少年兵がいた。佐世保での一週間はもっぱら休養し体力

の回復をはかるのが目的で、毎日町を遊びまわるだけだった。新しい軍服に

身を固めた少年兵五名は、内地勤務になるらしいとの噂に喜んだ。町で水

兵らが敬礼してゆくが、何とも照れくさかった。

 内地勤務の夢は断たれた。一週間後、われわれ五名の少年兵は、マニラ兵

站部(へいたんぶ)に出向、そこで更に命令を待ち受けるように下命された。そ

して、マニラに行く輸送船、「ハワイ丸かブラジル丸のいずれに乗船するか」と

尋ねられた。「あつき丸」が優秀船のために敵の潜水艦の攻撃目標にされた経

験から、大きなハワイ丸は避けようと、五人で相談して古ぼけたボロのブラジル

丸に決めた。

このボロ船選択が命拾いとなる。


 マニラへ向かう船団は途中、夜半に敵潜水艦の攻撃を受けて大型船ハワイ

丸は撃沈された。救命胴衣を装着して甲板から見ていたが、その様は壮絶そ

のもので、次は私たちの乗っている船がやられるのではと、積載しているドラム

缶の転がる音にも神経を苛立たせ、生きた心地はなかった。


 数日後、ブラジル丸は台湾基隆港に立ち寄り、水・燃料を補給して夜半に乗

じて再び南へと進んだ。魔のバシー海峡無事通過史、ボロ船はフィリッピンの

ボロ港に着き上陸した。それから二週間後、第輸送船団を組んで南方の前線

に向かっていた。

 ドカーン

 大きな音がして船が激しくれ揺れた。浅瀬に乗り上げたか。

 「魚雷だ

叫ぶ声に身の危険を感じた。出口をめざして走った。船は急に傾きだし、出口

までの二十メートル足らずが思うように進めない。通路も、どの出口も兵隊が

殺到し、逃げ惑い、叫ぶ、怒鳴る、この世とは思えない修羅場……。


 甲板は波に洗われている。夢中で海に飛び込んだ。船から少しでも遠ざかろ

うと必死で泳ぐ、もたもたしていたら沈んで行く船の渦に呑み込まれてしまう。

 航空母艦、数艘の駆逐艦の護衛のもとに威風堂々と進んでいた輸送船団の

中の新鋭船「あきつ丸」も敵潜水艦による攻撃で沈没……。


 助け出されることだけを願い、波間に見え隠れするボーとに向かって賢明に

泳いだ。近くの遠くの筏やボートに乗っている兵隊の軍歌が聞こえる。わが軍

駆逐艦の攻撃用潜爆雷が爆発、ハラワタが飛び出るほど激痛を感じる。

 脱出してから何時間だったであろうか。ようやく辿り着いたボートに救助を求

めたが断られてしまった。限界を超える数の兵が乗っていたためだろう。次のボートに向かって泳ぎだして間のなく、陸軍船舶特別攻撃隊船艇「あまがえる」

の乗員にやっと引き揚げてもらった。私たちは軍歌を歌い互いに励ましあいながら救助船の来るのを待った。夕日が水平線に沈みかけ辺りは暗くなりはじめたとき、遠くに駆逐船が見えた。板切れなど浮遊物に掴まり漂流している兵隊を救い上げていた。ボートのエンジン音があちこちから聞こえてくる。他の乗員も駆逐艦とエンジンを交互ににらみながらも手の施しようもないのかわれらが乗ったホーとのエンジンはかからない。あたりはすっかり暗くなり、救助を打ち切った駆逐艦は波の彼方に消えてしまった。“万事休す”。絶望感は口には出さなかったがみんなの顔にありありと出ていた。明日がある。必ず助けに来てくれる明日を待つんだと励まし合う。

 静かだった海はだんだんと荒れて白波が立ち始め、夜半過ぎには波はいっそう高くなりボートの中に容赦なく海水が入り始める。海はうねり、立っておれ

なくなった。寒い……。垂れ流す小便は股間に心地よい温もりを与えてくれる。飢えと寒さに睡魔が襲う。「おい眠るな、眠るな。眠ると死ぬぞ~!

 互いに励まし勇気つけ合いながら死線を超え生き延びた。



海軍力を世界に誇った日本だが……、

撃沈・海難事故で多くが海の藻屑となる。

前線で死んだ兵より海で死んだ兵多か

ったという。
****
**********************************************************************

**********************************************************************

********************************************************************** 



アップダウンアップ「吹田自分史の会」4月例会のお知らせアップダウンアップ

日時:4月20日(日)    10:00~12:00

場所:千里ニュータウンプラザ 7階

  (阪急南千里駅改札を出てすぐにある小さなお店を左に入口ドア)

プログラム

    1部 作品朗読発表

***********作 品 

************ ひろせまさひと・作 「友が逝く」

************八重 桜・ 「マー君元気にしていますか」 

***********朗読者 

ケケケケケケケケケケ ①安 見 佳 子さん (朗読工房所属)

*************②松尾佳世子さん(朗読工房所属)   ***********************

**********2部 ワンポイント講座

***********自伝的小説 井上靖『しろばんば』と藤沢周平『半生記』の文*************体と視点から自分史の書き方を考える

*************を予定していましたが講師吹田市外へ脱出のため休講。

********************
********************
***************** 花の命の短くて、散りゆくはかなさに

******************涙する優雅で平和な日本だが……。

          *****億2,751万5,000人を乗せた日本丸

******************は大きく面舵(船首を右に向けること)

******************とりよる尖閣諸島に衝突するぞ。

*******************♪七つボタンに桜と碇♪

********************♪貴様と俺とは同期の桜 みごと散り

***********************ましょ 国のため♪

************* ***** なんて世になりゃせんか。 ******************************      *