山の紅葉が深まり、青い空に映える。
思わず、「綺麗なねぇ」と言葉が出る。
そんな12月1日の朝、知人宅の軒下で飼い主の分からぬ猫が死んだ。
数か月前に突然現れた雉白のようなミケのようなサビ柄のような模様の猫。
最初、畑がある方に出没していたが、先月頃から民家の庭先でうずくまっている姿が
見られるようになった。
病気にかかっているのか高齢なのか、目やにで目が開かない状態だった。
飼い猫だったらしいと思ったのは、人間が近づいても嫌がらず
ゴロンゴロンと転がって腹を見せる事もあったからだ。
民家の庭先に現れるようになって、目が潰れている事で疎まれ
追われるように場所を変えていたが、家の軒下でうずくまっているのを見た知人は
軒下に段ボール箱を設置しタオルを敷いて、猫が入るように設えた。
餌と水も与えてみたが、猫は一度も口にしなかったという。
私は猫の話を訊いて漠然と猫は死に場所を求めてさすらい、ここに遣って来たのだろうと思っていたので
猫は餌を食べないのだろうと推察していた。
優しい知人は何とか猫に餌を食べてもらいたいと望み、15歳以上の猫用の猫缶を買って来て
与えてみたが、それでも食べないと残念そうにしていた。
知人宅の軒下で人の声を聴きながら亡くなった猫。
猫が死ぬ時に飼い主から身を隠し人知れぬ場所で死んでいくと長い間思っていた。
この猫がここに来たのは捨てられたからかもしれないし、自分の意志で死に場所も求め
ここに来たのかもしれない。
ただ、猫は最期まで人間の事が好きで、人の声に触れながら死んでいくのを選んだ。
猫が最期に身を寄せた知人の優しい人柄を見抜いた事が
悲しみの中で唯一救いだったと思う。
今朝、知人夫婦は猫の亡骸を猫車で運び、段々畑の一隅に埋葬した。
日当たりの良い美しい景色に囲まれた場所に猫は眠る。