57 ◇じいちゃんの話


 一度も俺に会いに来なかった……
会いに来てはくれなかった父さん。

 1度だってそんなヤツのこと、父さんだなんて
思ったことない。
 
 母さんは|あの男《父親》のことを悪く言ったことはないけれど
俺はじいちゃんから聞いていろいろ知ってるんだ。


 おじいちゃん、あの男のやり口は外道にも劣るってすんごい
怒ってたからなぁ~。

 難しくてほんとは分かんないけどじいちゃんが
怒ってるからよくないことだよな、きっと。


「恩に着せたくはないけど……
さんざん金銭でも気持ちでも、あいつに尽くしてきた娘に
あんな仕打ちができるあの男は人間じゃないさ。
 人の皮を被った獣だよ。

 四の五の言わず潔く身を引いた亜矢子のことをあの男は
気にも留めておらんだろうが、私は毅然としてて我が娘ながら
りっぱな人間だと思ってるよ。

 お前の実の父親のことを酷く言うのは憚られるけど、真樹夫
本当のことを知っておいてほしいんだよ」


 そう言って悔し気にじいちゃんは俺に話してくれた。


「あの男に亜矢子はもったいないさ。
 別れて正解だったンだ。
 お前は母さんを大切にしてやれ。
 母さんはか弱い女なんだからね。
 ポキっと折れそうになった時には真樹夫頼むぞ。

 男は女を守れてナンボだぞ、忘れるな。
 ばあさんも亜矢子もそしてこれからお前の伴侶になる嫁さんも
守れる男になれ……いいな」


「うん、じいちゃん分かった。
 守れる男になれるようガムバル。
 じいちゃんみたいな男になる」


「泣かせるんじゃない」

 じいちゃんはそう言って俺の頭をちょんちょんと撫でてくれた。


 愛情深いおじいちゃんに触ってもらって、俺は幸せな気持ちに
なった。

 俺のじいちゃんがこの人でよかったと思った。




 

 

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