町の喫茶店に入りました。

そこはコーヒーが美味しくて、少し長居しても嫌な顔をされない。

だから、時間があると訪ねます。

ゆっくりとメールの文面を作ったり、事務仕事をするのにぴったりのお店です。

タブレットを開いてメールのチェックを始めると、すぐ横の席から甲高い子どもの声。

 

見ると2歳ぐらいの男の子と5歳くらいの女の子、そして母親。

私より少し前に席についていたのでしょう。

子どもの前にはジュースとサンドイッチ、母親の前にはアイスコーヒー、

母親は無表情に、泣いている子どもを見ています。

 

なにか気に入らないことがあるのでしょう、

男の子は2~3分泣き続けました。

その間、母親はなにも言わないし、あやしもしない。

慌てる様子もなく、黙っている。

 

ふしぎと周囲の誰も文句を言わない。

仕方なく私も聞こえないふりをしてタブレットに見入ってました。

すると、急に静かになりました。

男の子は母親の膝に乗っていました。

母親の顔は無表情のまま。

 

そうそうお母さんのお膝の上が一番安心だものね。

私もホッとして仕事をつづけていると、

「おしっこ、おしっこしたい」と男の子が言い出しました。

母親は何も言わずに男の子を連れてトイレへ。

さすがお姉ちゃんはひとり静かに待っています。

 

戻ってきた男の子は、落ち着いたのかサンドイッチを頬張りだした。

すると今度はお姉ちゃんが「トイレ」

どうするのかなと見ていると、

「そこにいるのよ」と男の子に言い置いて女の子とトイレへ。

 

ひとりになった男の子は、トイレの方向を気にしながら

ちょっとの間、もぐもぐと口を動かしていました。

二人はなかなか戻ってきません。

しばらくすると「ママ~、ママ~」と言いはじめ、

その声はだんだん大きくなっていくばかり。

 

そうなるよね、と男の子に同情しながら成り行きを見ていると、

ようやく母親は女の子を連れて席に近寄ってきました。

そして、「帰るわよ」とひとこと。

 

男の子はまだ食べたそうです。

「来ないなら行っちゃうからね」と母親。

男の子はふた口サンドイッチをかじってあきらめたのでしょう、

さっさと行ってしまう母親の後を追って

小走りに出口の方へ。

 

テーブルの上には、サンドイッチが食べ散らかしてあり、

母親の飲もうとしていたアイスコーヒーは、

ほとんど手を付けてないようにいっぱい残っていました。

 

お母さん、飲みたくて注文したのでしょうに。

ゆっくり飲ませてあげたかったなぁ、と少し悲しくなりました。

無表情の裏にどんな気持ちを抱えているんだろう。

 

お母さんってたいへん、

子育てってしんどい、

だからせめてホッとする時間をあげたい。

 

そんな気持ちになりながら、コーヒーを飲んだのでした。