なんとなく成立後の二人でSSを。
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その日は鍵を開けようとすると中からドアが開いてびっくりしてしまった。なぜ蓮さんが今この時間、家にいるのだろう?
「お帰り、キョーコ」
「ただいま帰りました、蓮さん。もしかしてまた頑張り過ぎたんじゃないんですか?」
「キョーコ不足が酷くて、一刻も早く帰りたかったんだ」
玄関で靴を脱いであがると、すっかり慣れたハグとキスをする立ち位置がいつもと逆で、少しぎこちなくなってしまった。
本当の所、蓮さん長期ロケ帰りの予定は明日の夜中のはず。一日半も予定を繰り上げるために、どんな無理をしたのか心配だった。
「連絡くれれば、もう少し急いで帰って来たのに」
「キョーコを驚かせたかったんだ」
ハグされたまま耳元で囁かれると……
その考えを霧散させる様に不意にアラーム音がどこからか鳴り出した。
あれ? この音って……
「そうだ、キョーコも忙しくして帰って来るだろうと思って、洗濯したんだ!」
え? ちょっと待って下さい。どうやって?
「キョーコのランジェリーは痛みそうだから後で洗うつもりだったんだけどね」
え~と……他の物は一緒ですかね?
それより蓮さんの後ろに誉めて誉めて!とブンブン振られる尻尾が見える。
「あ、ありがとうございます。でも疲れてるのに無理しなくても……」
「じゃあご褒美頂戴?!」
「は? きゃあああっ!」
荷物ごと抱き上げられてしまった。
ちょっと待ってぇぇぇっ!
今はまだおやつの時間ですよっ!
それに洗濯物を干さなきゃ、皺になっちゃうんですけど!
このままじゃ確実に寝室直行だからっ!
「れれれ蓮さんっ!」
「何?」
「洗濯してくれて、ありがとうございます」
「うん、だからご褒美……」
「でもすぐに干さないと皺になっちゃうんです!」
「え?」
コテンと首を傾げる姿が可愛いんだけど、ここは負けられないんだからっ!
「だから干し終わったら……ね」
すると、蓮さんは深い溜め息を吐いた。
「じゃあせめてお帰りのキスだけでも堪能させて?」
……かいんまるの耳がしょげてる……
これには弱いのよ~~
大体、私だって蓮さんに会えなかった分、寂しかったんだから。
だから首に改めて手を回して、お帰りなさいのキスをその唇に落とした。
*****
キョーコが帰ってくる時間を計算して洗濯機を仕掛けた。
やり方は社さんに聞いてなんとか出来たし、後はスケジュール通り帰ってきたキョーコからご褒美を貰うだけ。
なのに、干さなきゃって、これ以上待ちぼうけは我慢できない。
だからキョーコの弱い所をつけば、案の定キスをしてくれた。
ずっとこの瞬間を、そしてこの続きを夢見て帰ってきたんだ。
甘い香りに包まれて舌を絡ませ合うと、その愛しさに我慢できなくなる。
荷物ごとソファに降ろして、後は長期ロケを頑張った分と洗濯した分、ご褒美を心行くまで堪能させてもらった。途中でキョーコは気絶してしまったから、キョーコに注意された事をすっかり忘れていた。
翌朝、起きたキョーコがバスルームに向かい、そこから悲鳴が聞こえてきた。
「れ、れ、蓮さんっ!」
「どうしたの? キョーコ?!」
「き、昨日、確か洗濯したって言ってましたよね」
「うん、したよ。そのご褒美も貰ったし」
「ちなみに・・・・洗剤と柔軟剤はどうされました?」
「センザイ? ジュウナンザイ? 何?それは?」
ああああっ、と言いながら頭を抱えるキョーコ。何か問題があったのだろうか?
「だって、全自動洗濯機でしょ? だから社さんが電源入れてスタートボタンを押すだけって・・・・」
「や、やっぱり・・・・」
それからシーツを巻きつけたままのキョーコ先生は洗濯機の使い方を一通り教えてくれた。
洗剤と柔軟剤の置き場所と入れる場所。そしてすぐに干すべき事を。
ってことは、俺がやったのは無駄だったって事なのか?
・・・・ちょっと凹む・・・・
でもキョーコはにっこりと微笑んでくれた。
「ありがとうございます、蓮さん」
「何で? だって無駄だったんでしょ?」
「でも、その気持ちが嬉しいから、ありがとうございます」
もっと怒ってくれてもいいのに。
君は俺に優しすぎるよ、キョーコ。
だから・・・・
「次は頑張るからね」
「じゃあ、今度はご褒美はもう少し軽めでお願いします・・・・」
それは聞いて上げられるかどうかわからない・・・・
でもまたやってみよう♪
<終わり>
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全自動洗濯機……微妙な言葉。
洗剤は勝手に出ないんだよ!
と、以前旦那に突っ込みをした経験が……。