本日は、ルドルフ・ケンペのブラームス交響曲1番について。

ケンペはブルックナーの5番の名演で知られている。いぶし銀のドイツ的な指揮者といわれるが、それはどのようなところか。

第1楽章は、ゆっくりとしたテンポで派手にならず、呼吸感、フレーズのつながりを大事に進んでいく。波のように寄せては引くような感じが最終楽章への複線となる。2,3楽章はやはり呼吸感を大事にしつつ、叙情性があり、メロディは時折センチメンタルなまでに強調される。でも、バランスは失われないのだ。第4楽章は今までの感覚を大切にしつつ、時折情熱が強く発せられる。歓喜のテーマは落ち着いていて、ゆったりと流れる。

バランス感覚と呼吸感、ケンペはこれにつきる。

ブラームス:交響曲全集/ケンペ(ルドルフ)

¥5,400
Amazon.co.jp

本日は小説の感想。

藤枝静男は私小説作家を自ら任じているし、一般的にもそう思われている。
私もそれに反対するわけではないが、大変モダニズムに影響された私小説作家である。様々な語りの操作があり、それが小説に大き深みを与えている。

この『欣求浄土』は連作とされる七つの短編からなる。初めの五つは主人公の性の悩み、罪悪感、自然を観察することでのそうした屈託からの開放などが淡々と語られる。五つ目の「天女御座」では、作者の私小説に関する意見が語られ、六つ目では主人公の死が友人から語られ、さらに七つ目の「一家団欒」では、なんと死後の主人公が語り手となり、先に墓に入っていた親兄弟と再開する。

こうした大胆なモダニズム手法を採りながら、どこまで行ってもこれは「私」の内面を観察し続けた「私小説」であり、個人を追及していくとある種の普遍性にたどり着くという良い例である。最後の「一家団欒」が感動的なのは、作者と重なり合う語り手の章(あきら)が、どこまでも家族に甘え、自分人生を悔いていくところで、これほどまでに自分の弱さをさらけだすからであろう。無愛想で内向的な人物に潜む、誰かに甘えたいという感情が、静かで緊張感のある文章で的確に語られるところにこの小説の凄みがある。

「私小説」は、実はどこまでも広がっていく可能性を秘めているということがわかる長編。

悲しいだけ・欣求浄土 (講談社文芸文庫)/藤枝 静男

¥1,155
Amazon.co.jp

本日は、鈴本演芸場へ。

「雲助・廓噺ふたたび」というシリーズ。鈴本、いいものやるなぁ。

まず、他の演者から。

菊之丞、白鳥、喜多八など豪華な顔ぶれ。

白鳥の看護師の噺は毒があり秀逸。なんていうネタだろう?

喜多八の「あくび指南」を見ることができたのが大変な収穫。
小三治とはまったく違うスタイルで、完全に自分のものにしている。はじめにあくびの師匠の奥さんに惹かれて指南所を訪れるという筋書きが、後に吉原に行くところを語る女好きの八っつあんの複線になっているところはさすが。あくびをしようとしてくしゃみをしてしまうところは、先代の小さんからいただいたのかな?

そして雲助。
廓噺でありながら、人情噺の名作として知られている「幾代餅」
お涙頂戴にならず、どちらかというとほんわかとした笑いを取りながら、のんびりと進んでいく感じがなんとも心地よい。雲助一流の声の抑揚と表情のつけ方で登場人物たちは生き生きと描かれていく。親方が羽織などを貸してやる場面、幾代が三月まで待っていてくれという感動的な場面も、大泣きするような描き方ではなくて、ほんのりと進んでいく。終わって、「ああ、いいお話を聞いたなぁ」と思えるよい時間を過ごすことができました。

雲助お勧めのCDを一枚。


五街道雲助3「朝日名人会」ライヴシリーズ54「真景累ヶ淵」-「豊志賀の死」/五街道雲助

¥2,310
Amazon.co.jp