ピンク薔薇
アルはだいぶ春めいた河原に腰を下ろし、イーグルさんがくるのを今か今かと待っていた。
 今日のアルはイーグルさんに話したくてたまらないことがある。
 イーグルさんの姿が遠くに見え、イーグルさんは微笑みながらアルに近付いてきて、柔らかい緑の草が生えるふかふかの土手に腰を下ろした。


「イーグルさん、聞いて。
この間イーグルさんに聞いたことがぼくわかったよ」
「何の話かな?」
「イーグルさん、目はウソをつけない、目を覗き込むと相手の考えていることや過去の気持ちや出来事やいろんなことがわかるっていったよね」
「そうだね」
「ぼくそれを体験したよ」
「それはすごいね、いつのことだい?」
「ちょっと前だよ」


 アルの住んでいる地域には学校のようなワークショップのような”みんなの家”という施設があちこちにある。地域に”みんなの家”はいくつもあり、それは誰がいつ行ってもよい場所だ。


 少し前、アルが丘を抜けて歩いていたとき、丘の上のみんなの家、通称”丘の家”を覗くと、
家の前に立つ杉の木に
「目の働きを体験する」
という掲示板がかけてあるのが目に入った。
 ちょうど時間があったので、アルは即座に参加を決め、家の扉を開いた。


「そこでね、何人もの人と代わる代わる組んだんだよ、
最初は男の人だった。大学生ぐらいの、20歳ぐらいかな、
彼はとても穏やかな優しそうな目をしていたよ。

 リーダーがお互いに目を合わせて、互いの目を覗き込んでください、というので、ちょっと恥ずかしかったけれど、彼の目を覗き込んだんだ。
 イーグルさん、そうしたら、何が起きたと思う? ううん、“見えた”と思う、かな?」

続く

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