ボートのデート。

二人きりでボートに乗って、ロマンチックな時間を味わいたいと思うなら、その前にボートを漕ぐ練習が必要だ。

ボクが初めてボートを漕いだ時。

先ずは、進む方向がわからなかった。普通、人は前に進む。

前へ前へと進むことを、幼い頃から経験してきたボクらにとって、後ろに進むボートの習性は以外とやっかいだ。



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だから・・・。

ボートの舳先を背にして座るという真実に行き着くまでに、人は紆余曲折をたどる。

ある者は、舳先の方向に座り「あれれれれ、うまく漕げないぞ」と悩む。

悩んだ挙句、櫂を空中で空振りし、それがもう一人の同乗者の頭にゴツンとぶつかり、いきなりモードは戦闘態勢。なんてことになってしまう。

「なんであなたに頭をぶたれなければイケナイのよっ!」。

なんてもう一人の同乗者がやおら立ち上がったりしたら、事態はますます混迷を極める。

混迷への道は、「アリャリャリャリャ〜」なんて叫び声を生み、その声と共に船が沈する。

そうなったらもう、デートはもうロマンチックもへったくれもなくなる。

互いを罵り合い、憎み合い、宣戦布告の様相を呈することとなる。

だから。

そうなる前にあなたには、必ず一人でボートに乗って欲しい。

ボートに乗って、練習に練習を重ねて欲しい。

ボクはそれを体で理解している。

なぜならボクもまた。

その激憤の状態を経験した、一人のオヤジだからである・・・。