一人時間差攻撃は何も、バレーの世界に限られたわけではない。
思い返せば我らが仲間。何をやってもあやしいAクンが編み出した一人時間差攻撃も、素晴らしかった。
ボクらが小学生のある日。
担任の先生から衝撃的な内容の発言が飛び出した。それはなんと、
「授業中手を挙げて発表すれば成績があがるぞ」。というものだった。
う~む。ボクらアホな子供たちは色めきだった。
「そうか」。手を上げて発表すればボクらはこの121212の成績から抜け出すことが出来るのか。
どうして。どうしてそれを今まで先生、教えてくれなかったのか。そんな大切なことを。


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そして、その日から。
ボクらアホな子供たちは、グングン手を挙げて発表するようになった。
担任が何か言う度に、「はいはいはいはいはい」と手を挙げるアホ少年。
授業はにわかに活気だった。
ただし、その賑わいとは裏腹に、授業の進行は悲しくも停滞した。だって、ボクらアホ少年たちの意見のほとんどは的外れだったから。
担任は困惑した。「う~む、こいつらが手を挙げる度に指さなければならない。でも指すとまるで、笑点の木久扇師匠のような答えしか返ってこないぞ」。
その後、担任の顔つきが変わったことをボクらアホ少年たちは見逃さなかった。
担任がボクらの的外れな発表に困惑している。アホだけど、肌感覚だけは敏感なボクらだったから、空気を読むことくらいはちゃんとできていた。
そうか。発表するだけじゃだめなんだ。指されたら、「いいこと」を言わないと、座布団はもらえないんだ。
でも、残念ながらボクらアホな子供たちが「いいこと」を言うのは至難の業だった。そこでボクらが身につけたのが、「手を挙げるけど指されない作戦」だった。
これは、何をやってもアヤシイAクンが編み出した荒技だ。
それでは、「手を挙げるけど指されない作戦」。説明しよう。
先生が何か問題を出した時。ボクらいいことを思いついていないアホ少年は即座に手を挙げるのを我慢する。そして、頭のいい方々が手を挙げて先生に指名されるのを待ち、彼らが指された瞬間に「はい」って手を挙げるのだ。
せっかく手を挙げたけど指されなかったぞ、残念!!そういうポーズを示すわけだ。ただし、それだけでは足りない。その後、頭のいい子がいいことを言い終わるのと同時に「同じで~す」と叫ぶのだ。
つまり「ボクがさっき手を挙げた時に言おうと思ったのと、同じ意見ですぅ」というアピールをここに付け加えるのだ。
これこそ、Aクンが編み出した一人時間差攻撃だ。手を挙げて発表したのと同じくらい価値ある行為を担任の先生はちゃんと評価してくれたのか。
というと、あまりにも一人時間差攻撃を皆がするので、担任の先生にボクらの作戦がバレてしまい。
結局成績は上がらなかった。とても悲しい。