秘密基地作りが流行ったのは、小学生の頃だった。
ボクが秘密基地を製作しようと真剣に考えたのは、フランスのマジノ要塞を子供図鑑で見てからだった。
来るべき、第三次世界大戦に備え、ボクらも秘密基地を製作しなければならない。
ボクらは、段ボールを使って、秘密基地をせっせと製作した。
それは、ゲンコツでボコッと叩くと、崩れ落ちてしまいそうな要塞だったけど、当時のボクらは真剣だった。友達と、仲間マークも考え、まさに20世紀少年のように、活発に活動した。

{A64FF573-86EC-4703-9D03-1A79426FE315:01}

ボクらが作る秘密基地は、当時、空き地や、よそのお宅のお庭にひっそりと置かれたが、それはことごとく撤収された。
今思うと、要塞が容易に撤収されるのは問題だったけど、ボクらのその行為の方がそれ以上に問題だったとも言えるから仕方ない。
土地占有権だとか、国家主権だとか、200海里問題について、まだ知らなかったボクらは、秘密基地が勝手に撤収されたこと自体に腹を立てた。
「う~む。ドイツ軍め。アルデンヌ地方から、我が軍国境を越えたな・・・。」なんて叫びながら、撤去されても、壊されても、ボクらはゲリラ的に秘密基地をあの日作り続けた。
雨にも負けず、風にも負けず。ある時期、ボクらは熱病に冒されたように秘密基地を作り続けた。
そして、その秘密基地の中で、漫画を読んだり、お菓子を食べたりした。
ある時。顔がおサルにとても似ているI口くんがその秘密基地にモデルガンを持ち込んだ。ブローニングM1900というモデルガンだった。
持つと、ガシっと重い。撃つと薬莢が飛び出る。それは、かなり本格的な代物だった。

{9A226153-E6E7-4108-B135-6C8977B25927:01}

これで、ボクらの要塞も、敵の侵入を防ぐことができる。サルに似た、I口くんのおかげで、ボクらの要塞の防衛力は格段に強化された。
それは、大きな出来事だった。
そのサルに似たI口くんは、とてもお金持ちだったので、その次の日には、ワルサPPKという別のモデルガンを持ってきた。他の子どもたちが、家内制手工業で、割り箸ゴム鉄砲を作っていた時代だったから、サルに似たI口くんの資本力は当時、セシル・ローズ以上に巨大だった。
そして彼は、一躍時代のヒーローへとのし上がっていった。
う~む。これからボクらは、このサルについて行こう。みんながそう思った。

ところが、日光サル軍団のようなボクらは、その後、ベーゴマを知ることになる。
すると、秘密基地ごっこは、あっという間に、その輝きを失ってしまう。
そして、ほどなくサルの支配は終了した。
その後、アスファルトの道路を探しては、ボクらはベーゴマをゲリラ的に回して遊ぶようになった・・・。
実に、心温まる思い出だ。