<ささやかな雨の思い出>

 

もう50数年も前の話です。

その時私は14歳。

厚顔、じゃなく紅顔可憐な美少年のころです(^O^)

 

たしか7月だったと思います。

その日は部活もなく、放課後まっすぐ家に帰っていました。

ところが、途中で急に雨が降ってきたのです。

 

 

あっという間に濡れてしまい、走っても同じだと思い、歩いて

帰ることにしました。

するとその時でした。

 

 

 

「どうぞ」

びっくりしました。

きれいな人が傘に入れと言っているのです。

 

 

14歳の私は、漫画かドラマみたいだなぁと、思っていました。

 

 

「〇○中学の子?」 「はい、2年です」

「じゃあ、この前××にバス遠足したでしょう?」 「あ、はい」

「あたしそのバスに乗ってたんだよ」 「は?」

「バスガイドなんだよあたし」 「え!?」

「あたしの顔覚えてない?」 「はい」

「じゃ、君のクラスじゃなかったみたいだね」 「そうですね」

 

この時の私は、ずっと夢見心地だったと思います。

 

ちらっと見た横顔は、きれいでした。

それに甘い香りがしていたような。

 

一緒に歩いたのは5分ぐらいでしょうか。

私の家が近づいたので、お礼を言って別れました。

その時彼女が「あたしの家あそこだから、いつでも遊びに来て」

と言いました。

見ると、家から歩いて2分ぐらいのところに、バス会社の寮が

ありました。

今までこんな近くに寮があるなんて知りませんでした。

 

 

彼女からすれば、ほんの挨拶代わりの言葉だったのでしょうが、

「遊びにおいで」と言われた14歳の少年には、罪な言葉です。

しばらくの間、遊びに行こうかどうしようか、純な少年は悶々と

していたわけですよ(笑)

結局行くことはありませんでした。

そういえば名前も聞いてなかったなぁ。

 

あのきれいな人は、私と相合傘をしたことなど、

覚えてないでしょうね。

50数年前のささやかな思い出でです。

 

今日もおつきあい頂き有難うございました。