
寝過ぎるのは睡眠障害?考えられる原因と対処法を精神科専門医が解説
はじめに
「たくさん寝ているはずなのに、日中も眠い」「休日は12時間以上寝てしまう」「寝過ぎて逆に体がだるい」――このような状態が続くと、「自分は睡眠障害なのでは?」と不安になる方も多いでしょう。
睡眠の悩みというと不眠が注目されがちですが、寝過ぎ(過眠)も立派な睡眠の問題であり、背景に病気や生活リズムの乱れが隠れていることがあります。
本記事では、精神科専門医の立場から、寝過ぎと睡眠障害の関係、考えられる原因、受診の目安、対処法について詳しく解説します。
寝過ぎとはどのような状態?
一般的に成人に必要な睡眠時間は6〜8時間前後とされています。
これを大きく超えて、
- 毎日9〜10時間以上寝ている
- 寝ても寝ても眠気が取れない
- 日中に強い眠気がある
といった状態が続く場合、「過眠」あるいは「過眠傾向」と考えられます。
単なる疲労や一時的な寝不足の反動であれば問題ありませんが、慢性的に続く寝過ぎは注意が必要です。
寝過ぎと睡眠障害の関係
「寝過ぎ=健康的」と思われがちですが、実際には睡眠の量よりも質が重要です。
寝過ぎているのに眠気が残る場合、
- 睡眠の質が悪い
- 脳が十分に休めていない
- 睡眠と覚醒のリズムが崩れている
といった可能性があります。これらは睡眠障害の一種として扱われることがあります。
考えられる主な原因
① うつ病・気分障害による過眠
うつ病というと「眠れない」というイメージが強いですが、過眠が主症状になるタイプのうつ病もあります(非定型うつ病など)。
- 寝過ぎても疲れが取れない
- 気分が落ち込みやすい
- やる気が出ない
といった症状を伴う場合は、精神的な要因を疑う必要があります。
② 特発性過眠症・ナルコレプシー
睡眠障害の中には、脳の覚醒機能そのものに問題がある病気もあります。
- 特発性過眠症
- ナルコレプシー
これらでは、夜に十分寝ていても、日中に強烈な眠気が出現します。居眠りや集中力低下が目立つ場合は、専門的な検査が必要です。
③ 睡眠時無呼吸症候群
「寝過ぎている」のではなく、眠っている間に何度も覚醒しているケースもあります。
睡眠時無呼吸症候群では、
- いびき
- 無呼吸
- 睡眠の分断
が起こり、結果として長時間寝ないと回復できない状態になります。
④ 生活リズムの乱れ・社会的要因
- 夜更かし
- 不規則な就寝時間
- 昼夜逆転
といった生活が続くと、体内時計が乱れ、必要以上に眠ってしまうことがあります。
特に若年層や在宅勤務の方に多く見られます。
⑤ 薬の影響
抗うつ薬・抗不安薬・抗ヒスタミン薬など、一部の薬には眠気を強める作用があります。
医師の指導のもとで量や服用時間を調整することで改善するケースも少なくありません。
寝過ぎが続くとどうなる?
寝過ぎが慢性化すると、以下のような影響が出ることがあります。
- 日中の集中力低下
- 倦怠感・頭重感
- 気分の落ち込み
- 社会生活への支障
「寝れば回復するはず」と思って放置していると、睡眠障害や精神的な不調が悪化することもあります。
受診を検討すべきサイン
以下に当てはまる場合は、医療機関への相談をおすすめします。
- 9時間以上寝ても日中に強い眠気がある
- 寝過ぎが数週間以上続いている
- 気分の落ち込みや意欲低下を伴う
- 仕事や学業に支障が出ている
睡眠外来、精神科、心療内科などが相談先になります。
対処法と改善のポイント
① 睡眠時間を一定にする
休日も含め、起床時間をできるだけ一定に保つことが重要です。
② 朝の光を浴びる
朝の光は体内時計を整える最大の刺激です。
③ 寝床に長くいすぎない
「眠れない・眠いから」といって長時間横になると、睡眠リズムがさらに乱れます。
④ 医師と相談しながら治療を
必要に応じて、薬物療法や認知行動療法(CBT-I)を組み合わせることもあります。
まとめ:寝過ぎは体からのサインかもしれない
寝過ぎは「怠け」や「体質」で片づけられることもありますが、睡眠障害や精神的な不調のサインであることも少なくありません。
- 睡眠の量より質が大切
- 背景に病気が隠れていることがある
- 早めの相談で改善が期待できる
「寝過ぎて困っている」と感じたら、一人で抱え込まず、専門医に相談することが回復への第一歩です。
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参考文献:
厚生労働省 e-ヘルスネット|睡眠と健康
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-005.html
日本睡眠学会|睡眠障害の診断と治療
MSDマニュアル家庭版|過眠症
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/sleep-disorders
American Academy of Sleep Medicine
Mayo Clinic|Hypersomnia
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会