羞恥心物語☆your mind8☆ | 鶴の神Blog

羞恥心物語☆your mind8☆

明日からはちょっと


都会の方へ旅に出ます(笑)


ズイくんじゃないですけど


探さないでください←


小説の更新も3日程


お休みしまーす(≧▽≦)



物語☆your mind8☆


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再びお屋敷に招かれた俺は


慣れない手つきで

ティーカップの紅茶を一口。





接客室というだけあって


全てがキラキラして見える。


こんな近くでシャンデリアを見たのは

多分、初めて。











「まさか、お礼に両親の


お墓参りをしてくれるなんて

思ってもみませんでした。」




「俺も思ってませんでした(笑)


…お父さんもお母さんも

面識が無いのに失礼なこと



してしまって…」






「いえ、そんな事無いです。


きっと喜んでると思いますよ。」









莢乃さんは軽く微笑み


「ありがとうございました」と

お辞儀をした。






「あの…前から思ってたんだけど


凄く大きなお屋敷だよね。




1人で住んでるの?」






「いえ、私と執事とメイドと…


使用人全て合わせると今は

20人程がこの家に。





両親はあまり家に帰ってくる


ことは無かったので

他界してからとその前はあまり



変わって無いんです。」















「じゃあ…兄弟とかは?


お姉さんとか妹でも…」





その瞬間、少しだけ莢乃さんの


表情が少し曇ったように見えた。















「いえ…私1人です」







そう言い終えると


すぐにいつもの穏やかな顔に戻る。



気のせいか、と思い


話を続けた。








「でもさ、執事の人とかが


周りにいっぱいいたら

結構賑やかだよね。


こういう暮らし憧れるなぁ~。




大きな家に住んで


美味しいものが毎日食べられて。





のびのび暮らせるんだから…」

















コトリ、と莢乃さんがティーカップを置く。
















そして静かな声で


「のびのびなんて…そんな訳無いです」



確かにそう言った。





















「え……?」




「使用人の方々は



私の身の回りのお世話をしてくれる

大切な人です。


でも、こうやって会話をするなんてこと


まずありません。


お仕事が済めば、私が何をしようと

勝手で自由なんです。






…でもそれは本当の自由じゃなくて。



















この家も、私には


大きな鳥かごにしか見えません。」

















莢乃さんは寂しそうに俯いた。















「私は、この鳥かごの中で



起きたことと窓から見える


景色しか知らないんです…」





















この前、蝉を知らないって


言った時も。



ただそれだけを知らなかった


なんてレベルじゃなくて









莢乃さんは本当に…


ここから外のことは







何も知らずに育ってきたんだ…。










































「今までずっと、



1人ぼっちのまま…」





思わずそう言ってしまった俺に


莢乃さんは


























「…そっか…。






私、今まで『1人ぼっち』


だったんだ…」





































優しい笑顔の奥には


言い表せない程の悲しみが詰まっている。




仲間に囲まれて生きてきた


俺には、誰とも話せずに




限られた箱の中で毎日を


過ごすなんて考えられなかった。













「ごめんなさい…こんな話。」








震える手でティーカップを手に取ると


中々口を付ける事が出来ないまま




莢乃さんの目から一粒の涙が零れる。


















































それが綺麗な水面を作り


俺はそれ以上何も話しかける事が





出来なかった。