「男の花道」 

これは講談を落語に仕立てた噺でした。なので笑うところはありません

江戸時代、昔は珍しかった眼科専門医(といっても他の病気も診るのでしょうが)半井(なからい)源太郎、長崎で医者の勉強をし、開業すべく江戸に向かっています。途中の宿で名優 中村歌右衛門が原因不明の病で「目が痛い」と・・・・容態が悪いので宿中大騒ぎになります。

頼まれて歌右衛門を診た半井、「これは『風眼』という病気で、治療をしなければ失明するばかりか命にも関わる」と言って治療を始めます。半井の不眠不休の大変な治療を終え、数日の様子見ののち歌右衛門の眼は無事元通り見えるように。

歌右衛門はそれを恩に着て治療費100両を差し出すが半井は頑として受取りません(頑固者なのです)。強いて言われてそれならばと薬草代のみを受取る。それに感服した歌右衛門、「何かあなた様に必要な場合が起こったらいつでも駆け付けます」と言います。

普通に考えると、そういう場面はちょっと思い浮かばないのですが・・・・やっぱりここは講談です。


三年の月日が経ちます。半井は開業しますが,
 もとより「医は仁術」という者なので相変わらず貧乏なまま。

 ある日半井は、水野出羽守の公用人である土方縫殿助(ふじかたぬいのすけ)の招集で向島の料亭に来ています。土方は医者に珍妙な踊りを躍らせたりして、宴席は大盛り上がり。しかし半井はしぶしぶ参上したこの場でつまらなそうな顔をしており、土方に目をつけられます。「今度はお前が踊れ」と迫られ自分は不調法者であるからと断りますが土方は許しません。執拗に迫る土方に「しかるべき踊り手ならば…」と言う半井。
「しかるべき踊り手といえば、坂東三津五郎か、中村歌右衛門か」と迫る土方。つい源太郎はかつて出会った「中村歌右衛門」の名を口に出してしまいます。
土方は「では、中村歌右衛門をここに呼べ」と言い、「来なければどうする」「中村歌右衛門様なら手紙一通でここに参ります。もし来なければ切腹します」という流れになってしまいます。いっときの猶予が与えられ、
源太郎は急いで手紙をしたため、半井は使いの者に託して中村座に出演中の歌右衛門へと送ります。
 中村座の歌右衛門は、命の恩人の半井源五郎からの手紙ということですぐさまこれを見ます。今まさに幕が開こうという時ですが、すぐに駆け付けなければ間に合いません。
歌右衛門の登場を待っている客席がざわつき始めます。幕が上がって登場した歌右衛門は、命の恩人の危機であるので芝居が始まるまでしばらく待って欲しいと話すと客席もそれに応じます。。駕籠を飛ばして向島に向かう歌右衛門。浅草寺から七つの鐘を打つ音が聞こえ、半井がまさに今、刀を腹に突き立てようとした時に、転げるように歌右衛門が座敷に飛び込んできます。
歌右衛門が踊りを舞い周囲はその見事さに圧倒されます。土方の怒りは解け半井の命は助かったのを見届け、歌右衛門は大急ぎで駕籠に乗り中村座に戻りますが、観客は誰一人席を立っていたものは無く、歌右衛門はまたとない『熊谷陣屋』を演じました。


 

はじめて聴いた噺だったので記憶の不足部分を「講談るうむ」様の記事で補わせていただきました。

 

 

あと一つ 「芝浜」はまた別記事とさせていただきます。

ふだん、噺の一つずつを記事にすることはないのですが、今年最後の落語鑑賞だからかな?それとも前回、開演時間を間違えて鑑賞し損ねてしまったのを今更惜しむ気持ちが後押ししているのかな(笑)などと自分でも不思議に思いながら書きました。だけど、残念なことに講談が基になっている噺だと、鑑賞したときのことを書こうとしても
、さん喬さんのことではなくあらすじの紹介になってしまいますね。

ともあれ、さん喬さんの演じるこの噺に引き込まれた数十分でした。

定点撮影の写真2枚はその3に使うので、代わりにワタクシのスマホの中で「10月のトップフォト」と表示された1枚をここにニコニコ

 


by  マヌカン☆