手の届かない先にあるもの・・・9 | 短編小説

手の届かない先にあるもの・・・9

 クラス全員が色紙に寄せ書きした。順番に一人づつ回ってくる。そして純子の色紙が回ってきた。だから書けたのかもしれない。そう憶えている。

「とってもかわいくて大好きな純ちゃんへ。また遊ぼうね!!中村英二」

 とにかく好きなことを相手に冗談でもいいから打ち明けたかった。そんな思いが強かったのだろう。でも書き終わってから少し後悔した。ストレートに書いてしまったので、後であれこれと詮索されるのを嫌ったからだ。当然冗談にしか思われない。けれども、それはそれで満足していた。ウブといえばウブである。思いを告げられないが仲良しであることには違いなかったのである。僕たちは相変わらず勉強を教えてもらいそして似顔絵を描くことを繰り返した。
 思いがけない年賀状に記憶は一層鮮明になっていく。
 僕はすぐペンを取り、返信の年賀状に丸文字にならないように注意しながらこうしたためた。