酔狂な男だと身構えて、

騙されまいと遠ざけて。


とうに、嫌いな自分ともオサラバできたと

思い込んでいたのに。


結婚を申し込まれた時も、

殊勝な事を言うのだなぁ…と、

まるで他人事のようにボンヤリ聞いておりました。

子供は望めぬ体ですし。


けれども、あのひとに廻り逢えて、

いまは、女に生まれてきてよかったと。

随分待った甲斐がありました。


あんなに憎らしかった神様にも、

少しずつ感謝できるようになりました。



へそ曲がり女の独白。



あの灯台守は、元気だろうか。

手をふりあって、少し微笑んだのは、

いつの日だったろう。


海原に漕ぎだして、一人きりで。

誰もいない。

なんにも見えない。

波の音も、もうよそよそしい。


夜明けの来ない夜はないというけれど、

この静寂が、時々たまらなくなる。


…もう、やめようか。


仰向けに寝ころんだら、

嗚呼…、いつの間に。

雲の晴れ間から、何億という星たちが

高らかに歌っている。


降って来るがいい!

この舟に。

この僕に。



生きているのは楽しい?

精一杯生きるって難しい。


僕は途方にくれている。

とうとう、その場に座りこんだ。


生きているだけで精一杯。


目を見開いても、

何を観ていいのかワカラナイ。

耳を澄ましても、

大切な音を拾えなくて。

鼻はとっくにバカになってた。

パンを食べても、

砂をはむように味気無い。

幸福感の代用品は、

まだ少しは機能している。

ポケットを手探りで探して、

冷えた指先で飴玉ひとつ掴む。

透きとおるマーブル模様見つめた。


生きているだけで精一杯。


手のひらに、ポタリポタリと雨粒落ちた。