しかし、時すでに遅かった。達也が呼び止めた頃には、和樹は全開で自転車をこいでだいぶ離れたところにいたのだ。

「…ハッ!そうだ、鍵を開けてくれてるって可能性も…」

 淡い期待を胸に達也は階段を上り、202号室のドアの取っ手を引いてみる。―――開かなかった。

「デスヨネー」

 棒読みでつぶやいた直後、なんとも腹立たしいタイミングで雨が降ってきた。

 ザァ――――――ッ

「すげぇ降ってんじゃねえか!」

 一気に体感温度が下がり、達也は自宅の前で絶望する。

「最悪だ…」

 頭を抱えてため息をついたと同時に、今度は203号室のドアが開いた。

「あれ、平松?」

「理人…?」