あっ、大家さん、東雲理人のファンなのか…。

 達也は察してしまった。おそらくスポーツ雑誌か何かを読んで知ったのだろう。

「で、でも…」

「なんなら兄貴のサインも付けますから」

 理人の兄、東雲文人―――彼もまた、大学で活躍する現役の選手だ。

 そしてそれを聞いた途端、大家がカッと目の色を変えた。

「しょ、しょうがないわねえ。文人くんが卒業するまでの1年だけ、特別よ?」

「ありがとうございます!!」

「ゴザイマス」

 お兄さんのファンでもあったのかぁ~。

 兄弟2人分のサインがもらえるとなれば、ファンとしては悪魔に魂を売ってしまうものなのだろう。

 深々と頭を下げた後、理人が去り際にニヤリと口角を上げたのを、達也は見てしまった。