peedyのブログ -2ページ目

大きなノッポ

って、どんだけ大きいんだろうね、今思えば。

用賀駅で降りたのは、これで2回目だ。
ぷうんと匂いたつような、濃い緑に癒される。
なんて美しい街なんだろう、と感嘆する。ふうーっと深呼吸。

OKストア前の「ヴィデオ100円均一!」特設コーナーを、ついWと物色。
ワゴンの中に「ショーミー・ラブ」を発見、懐かしくて思わず手に取ってしまう。

4年前、下北沢の、とあるアパートに、それはそれはかわいらしい二人の女の子が住んでいた。
もとの大家はフランスに留学中。その彼のお友達だった貧乏な女の子たちは、こりゃチャンスとばかりに、そのルックスと無邪気さで、期間限定のサラブレット借りに成功したのだった。

女の子たちのひとりをMとしようか。
Mは今までにあったこともない、とっても不思議な女の子だった。
とにかく眠らない。なにも食べない。西新宿のレコード屋で店員をしていて、給料もろくにもらっていないようだった。発言と行動は一貫性がなかったが、そのハチャメチャさを全部帳消しにしてしまうくらいの圧倒的な容姿をしていた。メーテルのようにまつげが長い。
その瞳でまっすぐ見つめられると、急に自分が悪者になったようで気恥ずかしく、彼女の前ではうまく顔もあげられなかったほどだった。

女の子たちのおうちには毎週末、仲間の何人かが集まっては、レコードを聴いてまったりとした夜をすごすのがそのころの通例だった。ありがちな若者たちの、ありがちなひとつの季節。
ある日、わたしとMが深夜に二人でお留守番していると、ねえこれ見て、内緒だよ、とベッドに寝そべったMの声が聞こえてきた。
うん、と腰をおこしてその方向を見ると、掛け布団がいつのまにかはがされて、あっけらかんと露出した白く美しいMの内股が見えた。そのかぎりなく深い部分に、「なんとか」とかいうダサイ名前が掘り込まれている。
その突然のコントラストにびっくりしてじいいっと声も出さずに凝視していると、
「前の彼の名前なんよ」
てへへ、と照れながらMは言った。

でも、Mは、という言葉を一瞬で飲み込んで、「そうなんだ、すごいね」とありきたりの声をかけた。
でも、Mは、一緒に住んでる女の子のことが、好きなんでしょう?
かわいくて、小さくて、おとぼけで、モデルと服の店員をやってる、同居人の女の子を。
そう、Mはレズビアンなのだと彼女自身から聞いたことがあった。

「わたし、どっちもいける。バイセクシャルってやつ?」
そのあと、「これ、わたしの好きな映画!」といって一緒に見たVHSが、「ショーミー・ラブ」だったのだ。
それはレズビアンが主人公の内容で、正直わたしには退屈だったがMは一人「わかるわかる~」と
盛り上がっていたのが印象的だった。


彼女は、あのころの仲間たちは、なにをしてるのかな。


世田谷美術館で横尾忠則展を見たあと、Wとぶらぶらと散歩をしながら、そんなことを考えていた。
Mはそのバイセクシャル宣言どおり、同居人の女の子に振られた後、仲間内のOという男の子を好きになった。
そのOから告白されていたわたしは、Oの友達のJに強烈に惹かれていた。
さて、Jは誰を?
それは最後までわからないまま。
あまりにもその関係が苦しくて苦しくて、わたしは言葉どおり、その仲間たちから「逃げて」しまったのだ。


ありがちな若者たちの、ありがちな笑い話。
ただ、それだけのことだ。

ただ、それだけのことなのに、またあんな季節が巡ってくるだろうか、とどこか期待して胸を騒がせていたりする。


横尾忠則も作品を通してそう言っているではないか。
「人生にゴールはない。再び冒険の始まりが待っているだけだ。」

no goal for life.




(たとえその続きがあったとしても、それはまだわたしの胸にしまっておく。)




ねえ、そこの貴女

ブログをお引越ししました。

おちまえとたてまえ

人生にドラマなんてあるわけない。
そこにはただの日常があるだけだ。
いや、ドラマはあるんだろう。
だけど日常というおおげさなマンネリズムに
飲み込まれて、過激な姿は影になり、記憶となり、思い出となる。

この瞬間が、一番すごい。強い。

だから気負わなくていいんじゃないの、と。

すぐ慣れるよ。ほんとよほんと。

いろんなことに心配しすぎることに、つかれちゃった。
想像力があるということだから、ムダとは思わないけれど。


声が聞こえるエトランジェ。