実 務  図面を描くこと と  井上係長の 先手(さきて)仕事 (計算)

 

 右奥 井上係長

 

 

図面を拡げているのは 高瀬主事  図面は トレーシングペーパーで  鉛筆書き、長いものでは 4mを超える

 

 

小生の製図机まわり  タイガー計算機     (正確に加減乗除を計算するには これが一番)

 

三角スケール、 青焼き図面 (既建造船の図面は 青)、灰皿、通勤かばん、各種資料

 

この写真は 誰かが 夏の暑い日に シャツ一枚で 計算している  小生を撮影  貴重な一枚

 

タイガー計算機 特に除算には 優れていた、時間はかかる、計算尺では正確な数値は出ない、

 

筆算では 遅すぎる、誤りも出る、したがって この タイガーを 愛用していた。

 

カシオの電卓は まだなかった。 イタリアから オリベッチ というのが来たが むつかしかった。

 

今のエクセルがあれば 瞬時に計算できるが   当時は このような苦労があった。

 

 

何を計算していたか

 

当時 タンカーは 6万トン(DWT 載貨重量 積み込む荷重)から 8,10,12万トン と 

 

石油需要の拡大により 輸送量の拡大要求下 タンカーは 大型していた、

 

設計で 仮定の 荷重条件下での 部材の決定と 自然条件の 差が  クラック(亀裂)を 随所に発生させ

 

危険なことの裏合わせが あり 解析方法に 苦慮していた。    有限要素法はまだない。

 

 

特に 左図の ロンジとトランスウエブ付き 

 

スチフナーの溶接部が軒並み 亀裂が発生 し 世界的に 大きな問題となっていた。 

 

 

このまま 運航を継続することは 危険だと 皆わかっていた。  修理しながら 走らせていた。

 

 

因島でも 一生懸命  井上係長を 中心に 検討が進めれれていた。

 

 そういう時に 入社配属された  のであった。

 

 

常々 勉強会が 行われていたのであろう、

 

ある時 九大 造船を 退官されて 72-3歳であられた 白髪の 渡辺恵弘 先生 の 

 

解析方法の 勉強会に 出席した。 KEIKO- 先生と 呼ばれていた。 

 

 

偉大な先生の前に座ったことは忘れられない。  眼前の 先生は コピー配布の ご提案の せん断力分布を示す 算式を 

 

黒板に すらすらと 書かれ  これで 計算してみたらよい と 言われた。

 

 

大きな感銘を 受けた。 軍艦の設計に 寄与してきた 昔の先生 の あらゆる 海の外力の発生を 全体的に 

 

運動・動揺なども 考えながら 強度解析する   先生の姿勢に 驚いた

 

先生への 九大の後輩からの 顕彰文を 以下に示す。 先生の偉大さが わかる。

 

 

 

 

現在の解析方法をしめす (造船便覧から)

 

 

 

 

上の写真は この時 渡辺先生ご提案の 算式で スロットまわりの 応力分布を 計算

 

 その結果 スロットの形状、 スチフナの形状、 裏ブラケット、 

 

カラープレートの配置、など 多くの 解析に基づく 設計変更が 試みられ 

 

亀裂発生を 抑えた

 

 

これは 一例である。 色んな 計算を させてもらった、 苦労したが 井上係長の 暗算速度にも いつも驚いていた。

 

 

図 面

 

図面描きは トレーシングペーパーで 鉛筆書きであった。

 

基本 白焼きだが 青焼きもあった。

 

現在とは違う コピーセンターがあった。

 

 

 

私は  約3年で 30枚 ほとんどの 構造部分を 作図した。  良い経験であった。

 

例えば 船の前部 BOW CONSTRUCTION  だけの図面で 長さ 4m あり、 40日 程度の期間で 完成させねばなら

 

なかった。 他部門 管艤装 外艤装 などとすり合わせしながら 作図、 まだ チョックファーストはなく ライナーで

 

ウインドラス(錨 揚錨機)の据え付図 の時代

 

 

朝から晩まで  平たく削った 鉛筆で 一定の幅の 線を  書き続けることも 多々あった。

 

 

図面のチェックは 主任の 赤鉛筆の チェック 手直し、 図面発行後 生産設計の ベテランからの 問い合わせ 変更要

 

求 など その図面が 収まるまで 改正の程度で (ALT(小改正) REV(大改正)) 何度も発行せねばならなかった。

 

 

これで 本当の意味で 鍛えられ 技術力が 身につく。 

 

南工場長の 狙い通りであった。

 

 

 

 

現在では 計算は  パソコン エクセルで  瞬時

 

図面は AUTO CAD で パソコン作図、 電送 A3 サイズ

 

 

但し 計算も 図面も 考えるのは 頭であり 門哲の通り

 

愛しなければ 良い OUT PUT は 出ない。

 

 

以下 当時の写真

今は 亡き 井上係長

 

井上係長と 小旅行

 

設計時の 4号岸壁 昼休憩時

 

                                                  2024.03.29        pedra-oishi 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下は 現在の 確立された 解析法の 一部を 便覧から 抜粋して 示す。